持ち主以外が使用する土地の相続税評価額は、自用地や遊休地の状態よりも減額できる場合があります。どのくらい減額できるかは、相続時の用途で変わります。
今回は、次の用途で貸している土地の相続税評価の一般的な方法について解説します。
持ち主以外の建物の敷地(貸宅地)
持ち主の貸家の敷地(貸家建付地)
貸駐車場
▼貸宅地の評価
土地の借り手側が建物
を建て、その敷地として
利用している場合、借り手側に借地借家法に基づく普通借地権や定期借地権が生じます。貸し手側は、自用の評価額(宅地の評価額)から借地権価額を差し引いた額で土地を評価します。
自用地評価額 - 借地権価額
普通借地権の場合、この借地権価額は、路線価等に定められた「借地権割合(30%~90%)」を自用地評価額に乗じて計算します。
ただし、借地権の対価にあたる「権利金」をもらっていない場合は「地代」に応じて借地権価額を調整します。
どのような調整かというと、権利金の支払いに代えて高い地代をもらっているのなら、借地権価額を減額し、貸宅地の評価額を上げるというものです。
この調整は、土地を借地と底地に区分し、権利金は借地、地代は底地の対価であるという考えに基づいています。
底地に対する通常の地代よりも高い地代をもらっているのであれば、貸し手は借地部分からも収益を得ており、借地権割合ほどの経済的な制限を受けていないと解釈されるため、貸宅地の評価額が上がるのです。
ただし、仮に「相当の地代」と呼ばれる、土地全体(借地+底地)に相当する地代をもらっていても、貸し手が完全に土地を自由にできるわけではないため、最大でも「自用地評価額×80%」までしか上がりません。
逆に、地代をまったくもらっていない、あるいは固定資産税くらいの少額な地代しかもらっていない場合は、民法の使用貸借であるとし、「自用地評価額×100%」で評価します。
▼貸家建付地の評価
ご自身の貸家(アパートなど)の敷地として使用している場合、その土地は次のとおり評価します。
自用地評価額×(1 - 借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
自身の賃貸業に使用しているとはいえ、その敷地は、建物の賃貸借契約によって借り手が使用するため、減額されます。借地権割合は30%~90%、借家権割合は30%ですから、相続時に満室(賃貸割合100%)であれば、9%~27%の減額ができます。
▼貸駐車場の評価
貸駐車場を自ら経営する場合は、自用地(一般的には雑種地)として評価します。減額はありません。不特定の人から車を預かっているだけであり、貸宅地等のように、一定期間にわたり特定の者から土地の用途を制限されるものではないからです。
一方で、他者に土地を賃貸し、その者がコインパーキングなどを経営する場合は、賃借権分の減額が可能です。
賃借権は「自用地評価額×割合」で計算します。
一般的には図の割合となりますが、駐車場の設備状況などで、下記より高い割合を適用できることがあります。
一級FP技能士 石田夏
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