▼アパート老朽化の問題
アパート等の賃貸建物が老朽化すると、
家賃を引き下げなければ空室になる、
修繕が必要になる、
修繕では対処できずに建替えが必要になる
といった問題が発生します。
家賃は、賃貸人と賃借人との合意が整えば変更することができます。しかし、家賃を引き下げる旨の合意は簡単に得られますが、家賃を引き上げる旨の合意の成立は通常困難です。
また、家賃を引き下げると定期的なメンテナンスに回せるお金が減るため、建物の老朽化が進行して更なる家賃の引き下げをしなければ空室が増えるという負のスパイラルから抜け出すことができなくなります。そのため、定期的なメンテナンスをしっかりと行い、建物の価値をできるだけ維持し、家賃を引き下げずとも空室にならないように心掛けるべきです。
▼アパートにかかる税金
賃貸建物にかかる税金は固定資産税評価額で決まります。賃貸人の死亡時の相続税は相続税評価額で決まりますが、建物の相続税評価額は固定資産税評価額と同額です。
建物の修繕をしても固定資産税評価額は増えないため、賃貸建物を相続させたいときは賃貸人の生前に修繕を済ませたほうが相続人が支払う相続税が少なくなります。
具体的には、賃貸人の死後に相続人が修繕をすると、相続税を支払った後の預貯金から修繕費を支払うことになりますが、賃貸人の生前に修繕をすれば、修繕費の分だけ相続財産が減少するため、修繕費相当額にかかるはずだった相続税が発生しなくなります。
また、賃貸建物の建替えを行う場合も、賃貸人の生前に建て替えたほうが相続人が支払う相続税が少なくなります。賃貸建物にかかる税金は固定資産税評価額で決まりますが、それは時価の7割程度であることが多いからです。
具体的に考えると、まず賃貸人の生前に建替えをすれば、相続財産は建替費用の分だけ減少します。一方で固定資産税評価額の分は増加しますが、固定資産税評価額は時価(=建替費用)の7割程度であるため、建替費用の3割程度にかかるはずだった相続税が節税になります。
▼法律上の問題点
さて、修繕と建替えに関し、法律的な問題点について簡単に触れておきます。
修繕についての問題点は、賃借人の費用負担にすることはできないかという点です。
そもそも、賃貸借契約は、賃貸人が賃貸目的物を使用収益させる代わりに賃借人は賃料を支払うというものです。そのため、賃貸人は賃借人が賃貸目的物を使用収益できる状態を維持しなければならない法的義務を負っており、その中には修繕義務も含まれます。ここで「修繕」とは、賃貸目的物の使用収益に支障が生じている状態を賃貸借契約締結時点の状態にまで回復させることです。
この日常のメンテナンスは賃借人にしてもらい、その代わりに老朽化したアパートを安く貸すといった契約を考えるオーナーもいらっしゃるかもしれませんが、その考えは非常に
危険です(続く)。
元弁護士Y
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