アパート建築の初期コストを抑えるには、土地のオーナーと「借地権設定契約」を結び、土地を借りるという選択肢があります。今回は、土地を借りる側の視点で借地権のメリット・デメリットを解説
します。
▼借地権のメリット
▽低コストで始められる
借地であれば、権利金やその後の賃料は発生するものの、購入するよりは安く土地を調達できます。これにより、立地条件の良い高額な土地でも、比較的低い初期投資で賃貸経営を始めることが可能になります。
▽突然退去させられることはない
現行法の借地権は30年以上の契約となり、期間が満了しても更新することができます。仮に地主から更新を拒否されたとしても、地主にその土地を使用する必要性がある等の正当な事由が無ければ更新することは可能です。なお正当な事由により地主から退去を求めるときは、期間満了の1年前から6ヶ月前に通知を出す必要があります。
▽固定資産税がかからない
不動産にかかる固定資産税や都市計画税は毎年1月1日の所有者に対して課されます。借地に賃貸アパートを建てている場合、土地の所有者は地主のままなので、これらの税金は地主が負担します。
▽登記をしなくても対抗できる
借地権は、その登記がなくても借地に建てたアパートの登記さえあれば第三者に対抗すること
ができます。
(注)建物が滅失すると対抗できなくなります。対抗措置が別途必要です。
借地権には賃借権にあたるものと地上権にあたるものがありますが、一般的には地主の負担が軽い賃借権である場合が多いです。賃借権の登記は制度としては存在しますが、地主に協力義務がないため実際にはほとんど行われません。
▼借地権のデメリット
▽地代を考えた経営設計が必要
土地を借りている間は、家賃を支払い続けることになります。
よって、ローンの返済額や他の管理コストと合わせて、家賃設定を行う必要があります。
▽定期借地権であれば更新不可
定期借地権の場合、契約の更新ができません。契約期間が終われば基本的に更地で返還することになります。
【定期借地権とは】
現行法では、普通借地権(=更新可能な借地権)のほかに「定期借地権」を設定することもできます。更新がないことから、中には定期借地権しか認めない地主もいます。
定期借地権にはいくつか種類がありますが、アパート建築では「一般定期借地権」を設定することになります(契約期間50年以上)。
▽地主とのトラブルも
家賃の増額請求や、リフォームの承諾などを巡り、地主とトラブルになることもあります。地主側の請求が必ずしも法的に有効なものとは限らないので、弁護士等に相談して対処することが望ましいです。
▽借地権も相続税の対象になる
借り主の相続が発生した場合、借地権が相続税の対象になることがあります。借りているものに税金がかかるのは不思議な感じもしますが、相続人は借地権を承継することで、その土地を使って稼ぐことができるようになります。この経済的な利益に着目して借地権も相続税の課税対象になることがあるのです。相続税に関しては、次回「借地権のメリット・デメリット②相続編」でお伝えします。
ファイナンシャルプランナー 石田夏
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