信託という仕組みを分類すると、民事信託と商事信託に分かれます。
この二つの違いは、受託者が、財産を預かって管理・運用することを営利目的で(商売として)で行っているか否かです。先の例を分類してみますと、投資信託は運用会社が手数料を取って商売として行うものですから商事信託、家族は商売として財産を管理するわけではありませんので民事信託に分類されます。
実は、民事信託の中にも、個人信託、福祉信託、家族信託など数多くの言葉が存在します。これらは全て民事信託の一種なのですが、このように言葉が乱立してしまっていることが、信託の実像を分かりにくくしているのではないかと思います。
個人信託は、受託者が信託銀行や信託会社ではなく個人にすることから、個人信託と呼ばれています。福祉信託は、障がいを持っている子供や家族のための信託を活用するので、福祉信託と呼ばれています。そして、家族信託は、家族が受託者になるので、家族信託と呼ばれています。いずれも、受託者は個人であり、業として行うわけではありませんので、民事信託というカテゴリーに入るわけです。
▼委託者・受託者・受益者の関係
信託は、委託者、受託者、受益者という三つの役割によって構成されている事は、前回述べたとおりです。
ここでは、この三役の関係をもう少し詳しく見ていきましょう。
前回、投資信託を例にとってお話しましたが、委託者(財産を託す人)と受益者(利益を受ける人)は、同じでも構いません。このように、委託者と受益者が同じ場合のことを「自益信託」と呼びます。自分が利益を受けるために信託しているという意味です。
次に、委託者(財産を託す人)と受益者(利益を受ける人)が異なる場合を考えてみましょう。例えば、財産を託すのは父、受託者は母、受益者は息子というパターンです。この場合は、委託者と受益者が異なるので、「他益信託」と呼びます。他人が利益を受けるために信託しているという事です。
では、委託者(財産を託す人)と受託者(財産を託される人)の兼任は可能でしょうか?自分の財産を自分に託す・・・おかしな感じがしますが、実は、このような信託も可能なのです。この委託者=受託者の信託を「自己信託」と呼びます。
最後に、受託者(財産を託される人)と受益者(利益を受ける人)の兼任はどうでしょうか。実は、このような信託も可能す。ただし、受託者と受益者が同じ状態が1年間続くと信託は終了するという規定になっていますので、この点は注意が必要です。
家族信託は、民事信託の一種であり、個人が受託者になることが多いのですが、次に該当する方は受託者になることができません。
①未成年者
②被後見人、被保佐人
受託者とは、財産を託され、運用・管理する役割ですから、財産管理につき判断能力が不足もしくは減退している人々には、適性がないと考えられるからです。
個人ではなく、会社のような法人を受託者にする事も可能ですが、業として(=商売として)受託者になる事ができるのは、信託銀行・信託会社だけと法律(信託業法といいます)で規定されていますので、注意が必要です。なお、信託会社というのは、数々の要件を満たした上で、金融庁の許可がないと作ることができません。法人を受託者にするケースでは、一般社団法人を活用する事がよくあります。
司法書士法人オフィスワングループ
司法書士・宅地建物取引士 島田 雄左
Comments