家族信託を知ろう【全3回シリーズ】 (3)家族信託を始める手順・注意点
- ジンヤ
- 3 日前
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認知症対策としての家族信託について、前回は成年後見制度との違いを紹介しました。今回は、家族信託を実際にどのような手順で始めるのかを解説します。
▼家族信託の始め方
①家族と話す
家族信託の第一歩は、家族と話し合うことです。本人以外の家族が財産を管理する制度であるため、まずは双方の承諾が前提となります。
管理を受託する側には、契約に伴う手間や負担を受け入れられるだけのゆとりも必要です。また、他の家族に黙って、兄弟姉妹の一人などに任せてしまうと、将来、実際に認知症となって判断能力が失われたときや相続の場面で、親族間にトラブルが生じる可能性もあります。このため、家族全体の了承こそが、家族信託の第一歩となるのです。
②信託契約の内容を決める
続いて、家族信託の目的や管理する財産の範囲、契約期間、信託終了のタイミング(委託者が亡くなるまで等)、終了後の財産の承継先など、信託契約に必要な事項を当事者同士で話し合います。場合によっては「信託監督人」の選任も検討しましょう。。
<信託監督人とは?>
財産を託された受託者が、契約で定められたとおりに財産を管理しているかを監督する役割です。信託契約の中で指定するか、後に裁判所へ申し立てることで選任することができます。通常は、受益者が受託者を監督する機能が働きますが、受益者が高齢で監督が難しい場合などに検討されます。
③信託契約書を作成する
契約内容が固まったら、その内容を正式な契約書にします。この契約書は、公正証書として作成するのがおすすめです。将来的なトラブル防止に役立つほか、金融機関によっては公正証書の提出を求められることもあります。公正証書を作成するには、公証役場で手続きが必要です。契約内容に不備があると公正証書にできないため、契約内容を決める段階から専門家に相談しておくとスムーズです。
④信託登記を行う
信託契約で託された財産は、受託者個人の財産と分別管理をしなければならず、それが不動産など登記の対象となる財産であれば、法務局にて信託登記を行います(信託法第34条)。実際に行う手続きは「所有権移転登記」であり、手続き後は権利部(甲区)の欄に「受託者」が登記されます。
⑤信託専用の口座を開設する
信託財産が金銭の場合、法律上は「計算を明らかにする方法」にて受託者の個人財産との分別管理が求められます。これにより実務では、信託専用の口座を開設し、その口座で管理することが通常行われます。金融機関によっては信託専用の「信託口座」を申し込める場合もあります。また、通常の口座を新たに開設し、その口座を信託専用とすることを信託契約書上で明らかにしておく方法もあります。
▼家族信託は専門家へ相談を
家族信託について、制度の利点や他制度との違い、そして実際の利用の流れまでを全3回にわたって紹介しました。親の認知症対策として家族信託が最適かどうかは、目的や状況によって異なります。場合によっては、他制度の活用や併用、または金融機関の代理人制度といった独自サービスで解決できることもあります。迷ったときや不明点がある場合は、契約に進む前に専門家へ相談し、最も合う対策を見極めましょう。
一級FP技能士 石田夏





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