民法債権編(債権法)の120年ぶりの抜本改正法案が、第193回通常国会で成立となりました。前号に続けて、その中身についてお伝えします。
▼連帯保証人の規定が変わる
今後施行される改正民法では、「連帯保証人が個人である場合に、『極度額』を書面で合意しないと連帯保証契約は無効になる」ということになっています。
現在の賃貸借契約では、ほとんどの契約が極度額を決めていませんので、連帯保証契約は無効になってしまう恐れがあります。この点は重要な改正点であり、新法施行以降で取り交わす賃貸借契約においては、契約書の内容を変更する必要がでてきます。
また、極度額を明示することで、連帯保証人を敬遠する人も増えと考えられます。そのような場合は、保証会社を利用するなどの対応が必要になりそうです。
▼賃貸借の滅失・使用収益不能は当然減額に
現行の民法では、お部屋が一部使えない場合に、賃料減額請求ができるという定めでしたが、改正民法では、当然減額される。という定めに変更になります。
例えば、通常使用でエアコンが故障した際に、エアコン修理業者が混んでいて、修繕するまでに時間がかかった場合は、減額の対象になることが想定されます。
エアコン以外にも、冬場の給湯器故障、給排水管の老朽化に伴う水漏れ事故なども賃料の減額対象になる可能性があります。
しかし、具体的にどの程度の減額が適正なのか、滅失の面積判定や、その他の事由の正当性などの判断が難しく、争いが増えることも予想されます。
そうならないためにも、これまで以上に、設備の定期点検や、問題が起こった際のスピーディーな対応が求められそうです。
▼「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へ
「契約不適合責任」は賃貸借契約よりも売買契約の方が影響します。現行の民法では、「瑕疵担保責任」として、事前に知らされていなかった重大な欠陥などがあった際の責任を言っているのに対して、改正民法は、契約の趣旨、目的に適合しているかどうかの責任を言っています。
契約不適合の場合、次の4つのいずれか措置が求められます。
損害賠償請求
代金減額請求
修補請求
契約解除
改正民法では、(2)の代金減額請求や(3)の補修を求める措置が追加されます。
売買時には、これまで以上に契約内容の重要性が増すことになります。
賃貸業界に関係する主な民法改正のポイントを見てきました。新法が成立し、施行まで3年を切った今、慌てないための準備を進めていきたいものです。
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