不動産オーナーの相続では、死亡時に保有する賃貸用物件を含む相続税の申告のほか、「準確定申告」についても考えなければなりません。
▼準確定申告とは
「確定申告」とは1月1日から12月31日までの個人所得と納税額を原則3月15日までに税務署に申告し、納税するまでの手続きをいいます。
これに対し、被相続人の1月1日から死亡日までの個人所得と納税額を、遺族が申告・納税する手続きを「準確定申告」といいます。
・準確定申告の期限
相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。ただし翌年の1月1日から確定申告期限までの間に確定申告書を提出しないで死亡した場合は、前年分と本年分の2年分を4か月以内に提出しなければなりません。
・準確定申告先
死亡当時の住所を管轄する税務署
▼準確定申告の手順
①必要書類を収集する
事業用の通帳や帳簿、領収書や請求書、所得控除に関する控除証明書、副業オーナーの場合は本業の源泉徴収票などを用意します。
前回の確定申告書の控えを見ながら集めると効率的です。申告方法には青色申告・白色申告の二種類がありますが、前回の申告で青色申告決算書が提出されているのなら、今回も要件を満たし、なるべく青色申告ができるようにしましょう。
②不動産所得の計算
不動産所得 = 総収入金額/必要経費
【総収入金額】不動産賃貸収入(計上基準に注意)、名義書換料、更新料、頭金、敷金や保証金のうち相手に返還しないもの、共益費等の名目で受け取る水道光熱費、掃除代 等
【必要経費】固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などの管理費 等
③準確定申告書を作成する
まず不動産所得にかかる青色申告決算書(あるいは収支内訳書)を作成します。それ以外の所得がなければ、続いて所得控除を計算します。扶養控除や配偶者控除は、死亡日の現況で判定します。医療費、社会保険料、生命保険料などの控除は、死亡の日までに被相続人が支払ったものが対象です。
※現時点で確定申告書等作成コーナーで「準確定申告書」は作成できません。
④確定申告書付表の作成
「死亡した者の(中略)確定申告書付表」を作成します。各相続人の相続分や、いくら納税額を負担するか等を記載する書類です。
⑤準確定申告書を提出する
電子申告、窓口提出、郵送の方法があります。 提出は、通常、各相続人が連署して代表相続人が行います。
⑥納税する
確定申告書付表の内容に従い、納税します。還付金があるときは、別途「委任状」を書面提出することで、代表者1人が受け取ることも可能です。
▼準確定申告の注意点
・青色申告特別控除65万円
令和2年分以降の準確定申告でこれを受けるには、従来の要件のほかに電子申告か電子帳簿保存のいずれかを行う必要があります。電子申告は「e-Taxシステム」を使って行います(代表相続人の電子証明書が必要)。このとき、各相続人は自署で署名・捺印した「確認書」を作成し、PDFで代表相続人に送信してもらいます。
・相続税への影響
死亡後に支払う被相続人の医療費等は、相続税の債務控除の適用を検討します。また準確定申告の還付金は相続財産に含めなければなりません。
ファイナンシャル・プランナー石田夏
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