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相続で取得した 不動産の売却にかかる税金③

 前回は、物件を売却した時に適用される概算取得費、相続税の取得費加算と言う2つの特例についてお話ししました。今回は相続物件が事業用不動産である場合に適用出来る特例についてお話しいたします。


▼「事業用資産の買換え特例」で8割引き!

 物件売却の課税は売却益すなわち「収入金額―取得費―譲渡費用」に対して行われることは既にお話ししました。仮に先祖伝来の土地を駐車場にして賃貸していたとします。この土地を相続で

取得し、1億円で売却し、仲介料等の譲渡費用が3百万円であったとします。先祖伝来の土地で取得費は不明であるため概算取得費の特例を適用するとした場合、1億円×5%で取得費は5

百万円となります。

 この場合、収入金額1億円―取得費5百万円―譲渡費用3百万円=9千2百万円が課税対象となります。この例で行くと税額は約1千9百万円となります。

 この課税対象を8割引きしてくれるのが「事業用資産の買換え特例」です。この特例を適用出来た場合、この物件売却税額は約4百万円に圧縮されます。


▼特例が適用出来る条件

 こんなおいしい特例ならぜひ使いたいと思うのですが、これがなかなか大変でその条件について説明します。

 まずは文字通り「買換え」であること。単純な売却ではなく、売却して新たな物件を購入することが前提です。

 またこれも文字通りですが、売却する物件も新たに購入する物件も「事業用」であることが前提です。第三者へ賃貸している物件であれば「事業用」の条件は満たしますが、この特例を使いたいから一時的に賃貸にしたようなものは認められません。


 まずはこの2点をクリアーしないと話にならないのですが、条件はまだまだ続きます。次は売却する物件と購入物件の組み合わせが決められていることです。組み合わせは法律上8つあるのですが、一般の不動産オーナーの方が対象になりそうな主なものは次のものです。

  • 売却物件は土地でも建物でもOKだが十年を超えて所有していること、

  • 購入した物件も土地でも建物でもOKだが土地の場合は建物の敷地で三百㎡以上であること。

  • 売却・購入がどちらも土地である場合、購入する土地の面積は売却する土地の面積の五倍までであること

 細かい条件はまだまだあるのですが、ここでは割愛させていただきます。


▼そんなに都合のよい買換え物件はあるのか?

 この特例の難しいところは、新規に購入する好立地物件がそんなに都合よく見つからないところ

です。無理に条件に当てはまる物件を見つけても、収益性が非常に悪ければ意味がありません。

 あと、注意が必要になるのが8割引きの仕組みです。物件の売却益は8割引きされるのですが、同時に新規に購入した物件の金額も税務上は8割引きされてしまうのです。

 例えば建物を購入した場合、減価償却費の対象となる税務上の対象金額が8割差引かれることになり、そのことは毎年計上される減価償却費も低下してしまうことを意味します。費用が減ることで結果としては毎年の税額が増加してしまうのです。


 この特例はうまくはまれば有効なものなのですが、どのような物件を購入するか慎重な検討要します。


税理士法人吉田会計 税理士 吉田和義

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