今回は、国土交通省連携事業の『賃貸住宅における省CO2促進モデル事業』(賃貸住宅の省エネ化)について整理していきましょう。
▼背景・目的
我が国の温室効果ガスの2030年の削減目標達成の為には、家庭部門のCO2排出量を約4割削減しなければならない状況にあります。
住宅建築においてもゼロエネルギーハウス等の展開が進んでいるものの、新規着工件数の約4割を占める賃貸住宅では、賃料アップや入居者獲得につながらないため、省CO2型の住宅供給、市場展開が遅れている状況にあります。そこで、市場への省CO2性能に優れた賃貸住宅の供給促進と、賃貸市場を低炭素化することが本事業の背景および目的となっています。
▼事業概要
①賃貸住宅について、一定の断熱性能を満たし、かつ住宅の省エネ基準よりも
A:20%以上(再エネ自家消費算入可)
B:10%以上(再エネ自家消費算入不可)
CO2排出量が少ない賃貸住宅を新築又は同基準を達成するように既築住宅を改修する場合に、追加的に必要となる給湯、空調、照明設備等の高効率化のために要する費用の一部を補助する
②本事業を活用して新築・改修された賃貸住宅については、住宅性能の表示や、インターネット等を活用した効果の普及やPRを行う
③さらに、本事業と並行して、賃貸住宅の紹介・斡旋を行なっている事業者と連携し、賃貸住宅の検索時に、低炭素型であることをメルクマークとした検索を可能とすることで、市場全体の低炭素化を官民連携で行う。
▼補助対象・割合
非営利法人→補助割合:定額
賃貸住宅を建築・管理する者
→補助率:①1/2(上限額:60万円/戸) ②1/3(上限額:30万円/戸)
事業期間:2016年〜2018年
要するに、一定の環境性能を満たす賃貸住宅を新築・改築する場合に、追加的に必要となる給湯・空調・照明設備などを導入するための経費の一部を補助するものです。
反面、賃貸オーナー様が『それは分かっているのだけど、そうは言っても設備投資がかさみ収益性が下がってしまうから…』と二の足を踏んでいることも多く見受けられます。
賃貸経営における差別化にソフト面(広さや間取り、採光、プライバシー確保)の快適性に直結するものがまだまだ多い中、利用できる制度を使い、ハード面の取り組みをされているオーナー様も増えています。
国土交通省の生活総合調査における住宅の個別要素に対する不満率は、
・高齢者などへの配慮(バリアフリー)
・地震時の住宅の安全性
・冷暖房などの省エネルギー性
・住宅の断熱性や気密性
などが上位を占めているのも入居者側の本音なのでしょう。
ハード面の性能が入居率を左右する時期も刻一刻と近づいているのかもしれません。
BORDERLESS DESIGN
一級建築士 田主健二
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