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賃貸入居者の残置物、さてどうする①


 賃貸経営者にとって非常に悩ましい問題のひとつが賃貸物件内の残置物です。

 なぜなら、賃借人が賃貸物件内に荷物を置いたままいなくなってしまうと、それらを撤去し賃貸可能な状態にするためには、多大な時間とコストが必要だからです。

 何事も事前の対策が肝要です。本稿では、事前の対策を怠るとどれほど大変な事態に直面することになるのかを説明した上で、講じるべき事前の対策について何回かに分けてお伝えします。


▼まず確認すべきこと!

 残置物の問題が発生したとき、賃貸経営者は、賃借人が生きていることを真っ先に祈るべきです。

 賃借人が生きていれば、交渉相手は賃借人になります。しかし、賃借人が死亡していると、交渉相手は相続人になります。賃借人が生まれてから死亡するまでの全ての戸籍を取り寄せて法定相続人を確定し、全ての法定相続人と話を付ける必要があります(相続人の中に外国居住者がいると、想像を絶する大変な事態になります)。


 最初に、賃借人が生きており、現在の居所が分かって連絡が取れるケースで考えてみましょう。

 賃借人が残置物の撤去に応じてくれれば、時間もコストも最小で済みます。賃借人が残置物の撤去に応じてくれないときの時間とコストを考えると、賃借人に10万円や20万円を渡してでも、残置物を全て買い取る契約をした方が得策です。


▼民事訴訟で強制執行

 賃借人が残置物の撤去に応じてくれないときは、民事訴訟を提起し、確定判決を得て、強制執行することになります(残置物は賃借人の所有物ですから、賃貸人が賃借人の承諾を得ずに残置物を撤去することは犯罪です)。


▼民事訴訟に伴う費用負担

 これらは自分ではできないため、通常は弁護士に依頼することになりますが、弁護士に依頼す

ると弁護士費用を負担しなければなりません。

 弁護士費用は、一審、控訴審、上告審、強制執行の各段階で別々に発生します。弁護士費用がいくらになるかは賃料や賃貸物件の価値に応じてケースバイケースです。

 賃料や賃貸物件の価値が高いほど弁護士費用も高額になりますが、賃料や賃貸物件の価値が低くても弁護士費用はそれほど下がりません。なぜなら、賃料や賃貸物件の価値が低かったとしても訴状の数字が変わるだけであり、弁護士の手間は大差ないからです。

 弁護士費用が50万円で済めば望外に安い(弁護士がかなりのサービス価格でやってくれた)と思った方が良いです。

 また、強制執行をするにもお金がかかります。裁判所から数時間で完了するように求められるため、裁判所に出入りする専門業者に依頼し、人海戦術で行うことになり、高額の人件費がかかるからです。

 しかも、撤去した残置物は賃借人の所有物ですから、勝手に処分することはできません。原則として倉庫を借りて保管しなければならず、倉庫料も発生します。

 ここまでフルでやると、最低でも、一年程度の時間と百万円程度のお金がかかります。賃借人にお金を払ってでも残置物を買い取るべき理由がご理解いただけたのではないでしょうか(続く)。

元弁護士Y 

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