令和2年7月10日より遺言書保管制度が施行されます。
相続時の相続人間の紛争等を極力、回避する方法としての、遺言書の作成について解説します。
▼そもそも遺言書の種類は?
遺言書の種類として、「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」があります(正確にはこれ以外もありますが省略します)。
▼自筆証書遺言
「自筆証書遺言」は、自分自身で、全文、日付を手書し、署名押印して作成するものです(改正により財産目録のページについてはパソコン等で作成したものでも良くなりましたが、目録の各ページに署名押印が必要です)。相続発生後、遺言書の保管者や相続人の申立てにより家庭裁判所で検認という手続(一種の証拠保全手続)が必要です。
▼公正証書遺言
「公正証書遺言」は、公証役場で公証人に作成してもらうもので、証人2名以上の立会が必要となります。公証人という法律のプロが関わりますので、内容的に、より確実な遺言書になります。公正証書遺言では、前記検認手続は不要です。
▼秘密証書遺言
「秘密証書遺言」は、これも公証役場での手続を要するものですが、公証人を含め、誰にも内容を知られずに作成したい場合に利用するもので、遺言書が封筒に封入されていることを公証してもらいます。署名押印は必要ですが、必ずしも全文自書である必要はありません。
証人2名以上が必要となり、相続発生後、自筆証書遺言と同様、前記検認手続が必要となります。一般的にはあまり利用はされません。
▼遺言書保管制度とは?
遺言書保管制度とは、前記の自筆証書遺言を法務局で保管するという制度で、令和2年7月10日から制度が始まります。
保管先は遺言者の住所地、本籍地、所有不動産の所在地を管轄する遺言書保管所(法務大臣の指定する法務局)です。
法務局の担当官(遺言書保管官)が、遺言書の原本を保管し、その画像情報等を管理します。なお、手数料の納付(1件につき3900円)が必要となります。
▼遺言書保管制度活用
のメリット
この制度利用のメリットとしては、次の点が挙げられます。
遺言書を遺言書保管所が保管するため、紛失を防止でき、推定相続人等による偽造、変造、破棄、隠匿を防止できる
保管申請時に保管官による形式の確認により相当程度、遺言が無効となるリスクを回避できる
相続発生後、前記の検認手続が不要となる
補足及び注意点ですが、
①について、最低でも相続人の1人や遺言執行者等へ遺言書の保管制度を利用している旨を伝えておかないと、遺言書が存在しないものとして、相続手続がされる可能性があるため、その点は従来同様に留意する必要があります。
②について、保管官による確認は形式的な点に限ると思われるため、複雑なケース等では、遺言書作成時に、弁護士、司法書士、行政書士等の専門家からのアドバイスをもらった方が良いでしょう。
遺留分等の配慮も検討すべきですし、些細な文言の相違により相続手続に影響が生じる場合がありますので専門家の関与も無駄にはなりません。
遺言書の内容によっては、かえって紛争を惹起する場合もあるため、一定程度の慎重さは必要となります。
立花司法書士事務所 司法書士・立花幸嗣
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