日銀は2024年3月19日の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除を決定し、マイナス0.1%としていた政策金利を0~0.1%程度に引き上げました。現在、追加の利上げが検討されています。
金利の上昇は、個人や法人が資金を借り入れる際の支払額の増加に繋がります。今回は、個人の住宅ローンを例に、金利上昇が支払額に与える影響を解説します。
▼住宅ローンの金利の種類
住宅ローンの金利には、変動金利と固定金利があります。変動金利とは短期金利に連動する金利です。変動金利の場合、半年ごとに金利が見直されます。固定金利とは市場の長期金利に基づく金利であり、返済中の金利は一定です。
さらに固定金利には、返済期間全体にわたって金利が固定されている「全期間固定型」と、金利が固定される期間が最初の2年、3年、5年、10年などで決まっている「固定金利期間選択型」に分かれます。
一般的に、変動金利の利率は固定金利よりも低く設定されています。その差はその時の市況によって変わりますが、現在は年1.5%程度の差で設定している銀行が多く見られます。
▼金利が上昇した場合の影響
▽変動金利の場合
マイナス金利政策の解除が影響するのは主に変動金利です。現在、日銀による追加利上げを前に、変動金利の上昇が懸念されています。すでに0.01%~0.02%ほどの変動金利の引き上げを行っている銀行もあります。
変動金利の元利均等返済の場合、金利が上がっても、5年間は返済額が変わらない仕組みがあります。ただし、これにより返済額のうち元金の返済割合が減るため、結果的に支払総額が増える可能性があります。
また5年を経過した後は返済額が増加しますが、「125%ルール」として、返済額の増加額が前回の返済額の25%以内に抑えられます。これにより、再び5年間は、返済額の急激な増加を防ぐことができます。ただし、返済期間は変わらないため、最終的に一括返済が必要となる場合があります。
今後の金利の上昇幅については、それほど大きくならないのではないかという見方もありますが、可能であれば繰り上げ返済などを検討し、上昇に備えることが大切です。
▽固定金利(全期間固定型)の場合
全期間固定型は、借入時に設定した金利が返済期間全体にわたって変わりませんので、返済途中であれば、金利上昇の影響は受けません。なお、2022年12月に日銀が長期金利の上限を引き上げてからは固定金利も上昇傾向にあります。
▽固定金利(固定金利期間選択型)の場合
固定金利の期間終了後は、金利タイプの選び直しが可能であることが一般的です。この時、固定金利を選んでも金利は再設定となるため、金利が上昇していれば返済総額が増加します。変動金利を選択する場合、固定金利の期間終了後は、金利の優遇幅が小さくなるタイプがあるの
で注意が必要です。
期間終了後は、その後に適用される固定金利・変動金利を確認し、他行と比較して借り換えも検討しておくことで、後悔のない選び直しができるでしょう。
一級FP技能士 石田夏
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