貸付用不動産の評価見直しへ(後編) 問題視された節税スキームを解説
- 3月18日
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令和8年度税制改正大綱にて、貸付用不動産の評価方法を見直す内容が示されました。見直しの対象は次の2つです。
課税時期前5年以内に購入した一定の賃貸用不動産
不動産特定共同事業契約または信託受益権の目的物となっている一定の貸付用不動産

令和7年11月13日、政府税制調査会における専門家会合において、賃貸マンションの一棟買いをはじめとする、相続税や贈与税の節税スキームが散見されることが議題となりました。
不動産の節税スキームについては、令和6年から適用が開始された、いわゆる「マンション通達」にて見直しが行われたばかりです。この通達により、分譲マンションは、築年数・総階数・所有物件の所在階数・敷地持分狭小度といった要素から、通達評価額と市場価格の乖離を求め、評価額が低すぎるものは市場価格の6割程度まで引き上げることとなりました。
ところが同通達は、令和4年の最高裁判決を受け、高層の分譲マンションの階層等による市場価格との乖離に特化して創設されました。そのため、区分所有されていないマンションや居住用でない物件は、この通達の対象外となります。そのため現在も、一棟買いの賃貸マンションや一棟で取得した物件を小口で販売する不動産小口化商品の一部には、市場価格との乖離による節税効果が大きいものが存在します。
この状況が、税制の在り方を中長期的視点で検討する政府税制調査会において議題に上がったのです。
結果、一部の賃貸不動産の評価が問題視され、今般の税制改正大綱の内容につながったものと見られます。
▼問題視された2つの節税スキーム
政府税制調査会で問題視された事例は、大きく二つあります。一つは、相続開始の直前に一棟賃貸マンションを取得した、いわゆる「駆け込み」の取得であり、もう一つは、不動産小口化商品を贈与したケースです。以下、それぞれのポイントを見ていきましょう。
▽事例①:駆け込みの一棟買い
享年80歳の被相続人が、相続開始のおよそ2年8か月前に、都心部の賃貸マンションを21億円で一棟購入したケースです。
相続時における当該マンションの通達評価額は4・2億円(鑑定評価額は18・5億円)でした。最終的な相続税の減税額は7・9億円となっています。
▽事例②:一定の不動産小口化商品
信託契約に基づき賃貸用不動産を小口化した商品を3千万円で購入し、その5か月後に贈与したケースです。評価額(信託受益権の通達評価額)は480万円とされました。受贈者はまもなく信託受益権を売却し、取得価額とほぼ同額で現金化しています。
(※)不動産小口化商品において、現物不動産と同等の節税効果が得られるかどうかは、契約形態によって異なります。
専門家会合で議論されたこれらの事例が、今回の税制改正大綱の内容に直接影響を与えたと見てよいでしょう。
相続税や贈与税の課税時期は、相続時や贈与時です。そのため、購入時点では有利に見える税制であっても、その後の改正によって節税効果が変わる可能性がある点には注意が必要です。
対象となる不動産の具体的な範囲や、適用開始時期などの詳細については、今後取り上げたいと思います。
一級FP技能士 石田夏




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