これまで3回に渡って、賃借人が賃貸物件内に残置物を残していなくなった時の大変さについてご説明してきました。ここで言う「大変さ」には、①「時間」、②「手間」、③「お金」の3つの意味があります。
第4回は賃貸経営者が事前に講じておくべき対策について説明します。
▼敷金および保証人による対策
賃借人と連絡がとれ任意の明渡しに成功しなければ法的手続に移行することになりますが、そうなるとどうしても時間と手間がかかってしまいます。明渡しまでに時間がかかればかかるほど、賃料相当額の損害が発生し続けることになってしまいます。
その対策として、①「敷金」と②「保証人」をとるという方法があります。
▽敷金
「敷金」とは、賃借人の債務を担保する目的で交付される金銭のことです(「保証金」という名目であっても、担保目的であれば法的には「敷金」となります)。
未払賃料があるときは敷金と相殺することができるものの、敷金を多額にすると入居希望者が集まらないリスクが発生するほか、敷金を多めにしても3か月程度が限度であることからすると、十分とは言えません。
▽保証人
保証人を事前にとっておき、滞納家賃は保証人に払ってもらう方法です。
裁判所は保証人にとって厳しい判断をするのが通常であり、1年程度の滞納家賃であれば問題なく支払いを命じてくれます。
賃貸人には、家賃が滞納されている事実を保証人に通知する義務はありませんが、滞納家賃が発生しており、その支払義務が保証人にある旨を保証人に説明することで、保証人が賃借人を説得してくれ、早期の明渡しが実現するときもあります。
しかし、令和2年4月1日から新民法が施行され、次の点が変更になりました。
上限金額を契約書に明記しない保証契約(対個人)は無効
賃借人や保証人が死亡したときは、その時点で保証債務の金額が確定し、死亡後に発生した債務は保証の対象外
この民法改正によって、資力のある保証人を事前にとるという伝統的な方法が使いづらくなってしまったのです。
▼家賃保証会社の利用
現時点におけるベストな方法は、賃貸借契をする際に家賃保証会社を入れておくというやり方です。
自動車で交通事故を起こすと、加入している保険会社が被害者との交渉や裁判対応(弁護士の紹介や弁護士報酬を含む裁判費用を保険会社が負担してくれます)をしてくれますが、大抵の家賃保証会社も車の任意保険会社と同じように対応してくれます。
しかも、家賃保証会社の手数料は賃借人が支払い、どの家賃保証会社にするかは賃貸人が指定することができますので、保証内容が充実し、迅速に対応してくれそうな家賃保証会社を入れておけば、時間はかかるにしても、手間とお金によるダメージを最小限に抑えることができます。
長きに渡り保証人で契約している場合には、管理会社に相談して更新を機に家賃保証に切り替えることも一つです。
元弁護士Y
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