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アパート経営が相続税対策に効くワケ④

 前回は、賃貸物件が満室であるか否かで、借家権分の控除が異なり相続税の評価が異なることをお話ししました。

 今回はたまたま空室があった場合に評価がどのようになるのかについてお話ししたいと思います。


▼「一時的な空室」であればOK

 普段は満室だったのに、オーナーのお亡くなりになった時期にたまたま空室であった場合、相続税の世界ではそれが「一時的な空室」であったと認められれば借家権分の全額控除をしてもOKとされています。


▼「一時的な空室」の要件

 それでは、どのような場合に空室が「一時的」と認めてもらえるのでしょうか?国税庁はホームページのタックスアンサーで、アパートやマンションにおいて次のような場合を「一時的」としてもよいとしています。

  1. 各部屋がオーナーのお亡くなりに  なる前に継続的に賃貸されてきたものであること。

  2. 以前の入居者の退去後速やかに新たな入居者の募集が行われ、空室の期間中、賃貸以外に使用していないこと。

  3. 空室の期間が、オーナーのお亡くなりになった時期の前後、例えば1ヶ月程度であるなど、一時的な期間であること。

  4. オーナーがお亡くなりになった以後の賃貸が一時的なものではないこと。


▼「1ヶ月程度」とはどの程度?

 ①や②、④は何となく分かるのですが③の1ヶ月程度とは具体的にどの程度の期間をさすのでしょうか?

 実はこの空室期間がどの程度なのかは一義的に決まっているものではないので、実務上も問題となる部分なのです。


▼最近の傾向

 税金の問題で国側の主張に納得がいかない場合、まずは国税不服審判所と言う機関に訴え出るのですが、そこで出される結果は「判決」ではなく「裁決」と言われます。その事例を見ていくと、最近の傾向が分かります。

 平成20年の裁決では定期的に補修を行ってきたことや空室となった後に速やかに入居者募集をしていたなど総合的に判断して空室数四戸(全体二十戸)、空室期間が最短二ヶ月から最長十一ヶ月であったマンションの空室を全て一時的とした事例があります。

 しかしながら、平成二六年の裁決では空室期間が最短四ヶ月から最長八年である賃貸物件が全て一時的ではないとされています。

 この事例において、オーナーのご遺族は次のように弁明をしました。

  1. 少子高齢化・既婚率の低下による住宅入居対象世代の減少

  2. アパート等の供給過剰に伴う駅近物件への集中

  3. 近隣にマンション等の共同住宅が林立しているといった事情から、空室が発生したからといって速やかに新しい入居者が決定するものではない。

 これに対し国税不服審判所はこの主張をバッサリと切り捨てています。


▼空室対策の重要性

 「一時的な空室」を国側が短めに見ており、結果として相続税評価が高くなるのが最近の傾向となっていることがお分かり頂けたと思います。

 オーナーの皆様には空室対策を収益の面からだけでなく、相続税対策の面からも重要であると認識して頂けたらと思います。


税理士法人吉田会計 税理士 吉田和義



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