前回は相続税において用いられる建物評価が市区町村の定める固定資産税評価を流用していること、その固定資産税評価はどんなに古くなってもゼロにならないことについてお話ししました。
今回は固定資産税評価を味方に付けた相続税対策について、お話をしていきたいと思います。
▼固定資産税評価額の実際
建物を所有されている方は、毎年固定資産税の明細が市区町村から送られてくると思います。その中の評価額を新築の頃から見ている方は極々少数だと思います。もし最近建物を建てた言う方がいらっしゃれば、ぜひ固定資産税明細書の評価金額を確認していただきたいと思います。
▼固定資産税評価は「新築価格の6割~7割」の噂は本当か?
固定資産税における建物評価は、総務省が定める評価基準書に従うのですが、簡単に言うと「同じ建物をもう一度建てる時にどれだけ金額が必要か」の7割とされています。
実際には若干幅があるので全ての建物がピッタリ7割とは限りませんが、だいたいこの範囲に収まるようにすることとなっています。
アパートオーナーの皆様の中には、建築会社の営業マンやインターネットで「建物は新築価格の6割から7割の評価」と言う話を聞かれたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、その話のおおもとは実は総務省の評価基準書にあるのです。
▼新築価格の6割から7割になっていますか?
偶然にも昨年あたりに建物を新築された方は、ご自分の固定資産税明細書をご覧頂けばよいのですが、そうでない方のためにこちらで実際の数値を御用いいたしました。
左の表は平成26年に木造アパートを二棟建設されたオーナー様の実際の数値です。
この表を見てお気づきになられた方は素晴らしいと思います。(建築費の高低は突っ込みどころではありませんよ!)最終の評価率が5割を切っていることが注目点です。
固定資産税評価は新築価格の6割から7割と言われていますが、実際は5割を割り込む数値となっています。それなりの費用をかけて建築した物件が翌年には5割を割り込む評価となってしまうのです。大手ハウスメーカーの物件でも4割を切っている例があります。
▼相続税への影響
こちらのオーナー様は、九千二百万円の現金を評価四千五百万のアパートに変換したことになります。仮に税率を1割としたならば、四百七十万円の相続税を節税したことになるのです。
今回は固定資産税評価は古い物件にとって高いが、新築物件には低いと言うお話でした。次回は満室物件は相続税の世界では評価が低いと言う点についてお話をしたいと思います。
税理士法人吉田会計 税理士 吉田和義
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