最終回は事例をもとにサブリース方式のリスクをお伝えします。
▼逆ザヤのサブリース事例
【事例】Aさんは、マスターリース契約がセットになっている中古マンションを購入した。マスターリース契約書には、入居者賃料9万円、マスターリース賃料8万円との記載があったが、実際の入居者賃料は5万円だった。
この事例では、Aさんは、サブリース業者から毎月8万円をもらうことができます。これに対し、サブリース業者は、入居者から5万円をもらってAさんに8万円を渡すことになるため、毎月3万円の赤字が発生します。そのため、一見するとAさんは損をしていないように見えます。
たしかに、マスターリース契約が同じ条件でずっと継続し、サブリース業者が毎月8万円をずっと支払ってくれるのであれば、Aさんが損をすることはありません。
しかし、当該サブリース業者が経営破綻したときは、Aさんは、入居者と直接賃貸借契約を締結するか、別の賃貸住宅管理業者に委託しなければなりません。その際にAさんが得られる家賃は、マスターリース契約書に記載された9万円ではなく実際に入居者が支払っている5万円になるため、マンション購入時に想定していた月額8万円の収入を得ることはできなくなります。
また、当該サブリース業者が破綻しなかったとしても、当該サブリース業者にとってはサブリース賃料のほうがマスターリース賃料よりも安いという逆ざや現象が発生しているわけですから、マスターリース契約を維持すればするほど赤字が膨らんで損をすることになります。そのため、マスターリース契約を当初の賃料のままで維持する意欲が減退し、マスターリース賃料の減額請やマスターリース契約の中途解約を願うようになります。
▼中途解約のリスク
重要なポイントは、国交省はマスターリース契約書のひな型を公表しており、賃料の減額請求については厳格な要件を満たす必要がある旨を契約書に明記することを求めているものの、マスターリース契約期間中のサブリース業者による中途解約については、6か月程度の猶予期間を設けるのであればやむを得ないという内容になっているということです。
つまり、サブリース業者から「入居者賃料が5万円なのでマスターリース賃料を8万円から4万円に減額してください。それがダメなら中途解約権を行使するので、別の業者に頼んでください」と言われると、実際問題としてどうすることもできず、マンション購入時に想定していた資金計画が崩壊してしまうことになります。
したがって、マスターリース契約がセットになった中古マンション等を購入する際は、入居者がいつ幾らの賃料を支払っているのかをしっかりと確認するとともに、マスターリース契約を定期建物賃貸借契約にして、賃料減額請求権を行使できないようにし、かつ契約期間はローンを完済できる程度の期間にしておくことが望ましいと言えます。
元弁護士Y
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