▼相続分野における平成29年度税制改正の概要
平成29年度税制改正法が3月31日に公布、4月1日に施行されました。私の専門分野である相続・贈与分野では主に次の4点が見直されています。
非上場株式の評価方法
事業承継税制
相続税・贈与税の納税義務者の範囲
広大地評価
正直に言って、大多数の不動産オーナーの方々には今回の改正に対する影響はあまりないと思われます(広大地評価については詳細が定まっておらず、影響の度合いが不明です)。
「おいおい、タワーマンションに規制が入ったのではなかったの?」との声が聞こえてきそうですが、タワーマンションに対する見直しは入ったには入ったのですが「相続税法」が見直されたのではなく「地方税法」が見直されたにとどまったのです。地方税法における固定資産税が改正され、その結果タワーマンションの評価に影響が出るとするのが正しい理解なのです。
▼相続税における建物評価
そもそも、相続税において建物をどのように評価するかオーナーの皆様はご存じでしょうか。土地については路線価方式と言うものを耳にすることが多いと思います。これは毎年7月1日に国税庁が発表する路線価に土地の地積を乗じ、土地の形状に応じた補正を行う評価方式です。
建物については建物が所在する市区町村が算定した固定資産税の評価額が基準となっており、現行は「固定資産税評価額×1.0」とされています。おそらく今時分、皆様のお手元に平成29年度の固定資産税の明細が送付されていると思われます。固定資産税が相変わらず高いなあと、税額を気にされるオーナー様が多いと思いますが、たまにはページをめくって個別の評価額もご覧いただくとよいかと思います。
土地と建物別に、評価額と課税標準額が記載されているのが分かると思いますが、相続税の評価に用いられるものは固定資産税の「課税標準」ではなくあくまで「評価額」ですのでご注意ください。
▼タワーマンションに対する固定資産税の改正の影響
実は固定資産税の評価は1階でも50階でも、床面積が同じなら同額でした。これが相続税評価の基になるのがけしからん、高い階は評価も高くが国の主張です。このため中間の階は評価に変動がないが、1階上がるたびに0.26%評価を上げ、1階下がるたびに0.26%評価を下げると言う形に改正されたのです。
具体的には50階建て物件だと25階に比べて50階は6.5%増し、1階は6.24%減です。これは相続税に次のように反映します。仮に固定資産税評価額1,000万円の物件を持っていた場合、相続税評価が1,065万円になり改正前より65万円評価があがります。最高税率が55%なので最大で35万円の増税。1億円のマンションを買える人にとってこれはどんな額でしょうか?しかも平成30年度から新たに固定資産税が課税される新築物件のみが対象で既存物件は対象外。要は、今回の改正はタワーマンション節税封じになっていないと言う結論にならざるを得ないのです。
税理士法人吉田会計 税理士 吉田和義
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