相続や遺贈によって遺産を取得すると相続税が発生する可能性があります。相続税の節税にはさまざまな方法があり、適切な方法は個別の状況によって異なります。中には、インターネット等の断片情報で特例などを適用すると、かえって税負担が増えてしまう落とし穴もあります。
これを避けられるよう、全3回にわたり、相続税の基本的なしくみと、一次相続・二次相続の注意点と対策を解説します。第一回目は、相続税の基本的な計算について説明します。
▼相続税の基本:法定相続人とは
法定相続人とは、相続権のある者として法律で定められている親族のことになります。故人の配偶者は必ず法定相続人となり、それ以外は、故人の子、直系尊属(親や祖父母など)、兄弟姉妹の順に相続権が移行します。「法定相続分」(=相続権の割合)は、図のとおりです。
例えば、法定相続人が故人の妻、長男、長女であり相続財産が2億円の場合、法定相続分は妻が1億円(2分の1)、長男と長女がそれぞれ5000万円ずつ(各4分の1)となります。
このとおりに遺産を分ける必要はありませんが、相続税の計算ではこの割合が重要になります。
▼相続税の計算方法
相続税の計算は、各人が取得した財産の合計から基礎控除を差し引き、先ほどの「法定相続分」ごとに相続税率を乗じて「相続税の総額」を算出します。相続税率は図のとおり、10%~55%の累進課税であり、遺産が高額なほど税負担が重くなります。
例を挙げてみましょう。相続財産1億円に対し、法定相続人が配偶者と子2人の場合、相続税の総額は630万円ですが、相続財産が倍の2億円の場合、相続税の総額は2700万円になります。なお、この630万円や2700万円は、各人が取得した財産額に応じて負担します。仮に2億円を法定相続分に従い、妻が2分の1、子が各4分の1で分割した場合、2700万円もその比率で負担します。
▼配偶者の税額軽減とは
なお、配偶者が負担する税額(2700万円の場合、1350万円)は「配偶者の税額軽減」を適用することで0円になります。これは配偶者の相続税を大幅に減らす特例であり、配偶者が取得した財産が1億6000万円以下、または法定相続分以下であれば、配偶者の税負担はなくなります。「それなら、配偶者に遺産を集中させたら節税になるのでは」という気がしますが、そうとは限りません。
これこそが落とし穴です。次回は、法定相続人の数による相続税の変化をお伝えします。
一級FP技能士 石田夏
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