令和2年度税制改正の大綱の概要が昨年暮れに閣議決定されました。その概要をお伝えします。
▼居住用賃貸建物の消費税還付スキーム封じ
居住用賃貸建物の取得にかかる消費税が、仕入税額控除の対象から外れます。
【居住用賃貸建物とは?】
住宅用の賃貸としないことが明らかな建物を除く高額特定資産にあたる建物。一つの取引単位につき、税抜き一千万円以上の建物が対象となる。
住宅用の賃貸収入は消費税の非課税売上にあたるため、通常、住宅用の賃貸建物を購入する際に支払った消費税は仕入税額控除の対象になりません。
しかし消費税は、課税売上割合95%以上などの要件を満たすと、支払った消費税の全額を仕入税額控除とすることができます。
この仕組みを利用し、居住用賃貸建物を取得した課税期間中に金などの売買を繰り返して課税売上割合をわざと引き上げ、消費税の還付を受けるというスキームがありました。
このことから次年度改正では、居住用賃貸建物の取得にかかる消費税を仕入税額控除の対象から除外することにしています。ただし住宅用でないことが明らかな部分は、現行どおり仕入税額控除の対象となります。
▽10月から適用開始
適用開始は令和2年10月からの予定です。ただし令和2年3月末までに締結した契約に基づく居住用賃貸建物の取得には、例外があります。
▽仕入税額控除の加算とは
居住用賃貸建物の取得から一定期間内に、住宅以外の用途で賃貸を行った
場合や、建物を譲渡した場合は、その対価の額を基礎として計算した額が、仕入税額控除に加算されます。
▼建物の状況等による判定の追加
住宅用であると明らかにされていない賃貸契約の収入は、消費税の課税取引とされていましたが、大綱では「建物の状況等」から居住用であることが明らかな場合は、その賃貸収入を非課税とすることにしています。
従来の契約ベースでの判断はそのままで、明らかでない場合につき状況による判断が加わります。
▼所有者不明土地の固定資産税の賦課
相続登記の未了などで、所有者不明の土地や家屋がある場合、市町村は、土地や家屋を「現に所有している者」に、固定資産税の申告をさせることができるようになります。通常は相続人がその対象になります。
▼固定資産税の使用者への賦課
市町村は、土地や家屋について調査を尽くしても所有者が判明しないときは、「使用者」を所有者とみなして、固定資産税を賦課することができるようになります。
▼低未利用土地の譲渡所得の控除
個人が、都市計画区域内にある低未利用土地(その年1月1日において所有期間が5年を超えるもの)を一定の要件のもと譲渡した場合、長期譲渡所得の金額から100万円を控除できるようになります。
【主な要件】
市町村の確認がなされた低未利用土地であること
譲渡対価の額が500万円以下であること
売買の相手が配偶者や一定の関係者でないこと 他
詳細な要件や適用時期については、専門家に確認しましょう。
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