今般、民法が改正され、2020年4月1日に施行されます。新民法では様々なダイナミックな改正がなされましたが、賃貸業に大きく影響するのは保証人の法的責任についてです。
▼保証人の法的責任
まず、2020年3月31日までに締結した賃貸借契約には従来の民法が適用されます。
従来の民法を簡単に整理すると、保証人は賃借人の債務を契約の更新後であっても無限に保証するのが原則です(ただし、余りに高額で保証人にとって酷なときは、信義則によって保証人の負担額が制限されるときもあります)。
そして、保証人が死亡したときでも保証人の法定相続人に当然に相続されます。
つまり、賃貸人の側に非常に有利な(裏返せば保証人の側に非常に不利な)ことになっていたわけです。
▼新民法での改正
新民法では「個人の第三者保証人は認めるべきではない」という価値判断が採用されたことから、保証人の責任を極力限定する方向で法改正がなされました。
具体的に説明します。
第一に、極度額(保証人が負担する可能性がある最大額)を契約書に明記しないと保証契約そのものが無効になります。
第二に、借主か保証人のどちらかが死亡した時点で保証債務の元本が確定します。
第三に、借主は保証人に対して自身の信用情報を提供しなければならない義務を負います。
賃貸事業者にとっては、保証債務に極度額を設定するのは不利益であるため、2020年3月31日までに賃貸借契約を締結して極度額のない保証人を確保できるのであれば確保したいと考えることでしょう。
▼更新時の扱い
2020年3月31日までに賃貸借契約を締結したとしても、更新時期が到来した際、賃貸借契約書を作り直し、保証人に署名捺印を求めると、新民法の効力が及ぶ新たな保証契約とみなされるリスクが発生してしまいます。
この点について、伝統的な民法の解釈では、賃貸借契約が更新され、その際に新たな契約書を作り直したとしても、それは最初の契約内容を確認したにすぎず、従前の賃貸借契約を解除して新たな賃貸借契約を締結し直すものとはされません。
そのため、仮に保証人が更新契約書に署名捺印したとしても、保証人は従前の契約に従って極度額のない保証債務を負担することになります。
しかし、民法改正を担当した法務省民事局は、この場合には新民法が適用されるとしています(民法(債権関係)の改正に関する説明資料19頁)。
つまり、法務省民事局の見解によれば、更新契約書に保証債務の極度額の定めがないと保証契約そのものが無効になってしまうわけです。
この見解を裁判所が採用するかどうかは分かりませんが、あえて危ない橋を渡るべきではありませんので、更新契約書を作成するとしても賃貸人と賃借人のみで署名捺印し、保証人には更新の事実を通知するのみにとどめるべきです。
(元弁護士Y)
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