今回は、前回お話ししました登記済権利証や登記識別情報通知について、それらを紛失
した場合の対処法等について、解説致します。
▼登記済権利証等無効化の可否
登記済権利証や登記識別情報通知を紛失していることが分かった場合、その書類を無効にできれば、自分が意図しない登記の危険を低減できる可能性があります。
まずは登記済権利証を紛失した場合ですが、残念ながらこれを無効とする制度はありません。自分以外の者の手に渡った可能性があっても無効とすることはできません。
対処法としては、 印鑑証明書(あるいは印鑑カード・印鑑通帳)及び実印(を押した書類)をしっかり管理することしかないということになります。
次に登記識別情報通知を紛失した場合ですが(書類の紛失だけでなく、12桁の英数字である情報が他者へ渡った可能性がある場合も含む)、こちらについては無効化が可能です。
「登記識別情報の失効の申出」を法務局に対して行うことにより、登記識別情報通知を使えないものにすることができます。
ただし、一度、失効をしてしまうと、再度有効にすることも、別の登記識別情報通知の発行を求めることもできません。
なお、「不正登記防止申出の制度」もありますが、書類の盗難の場合は、警察への盗難届など一定の要件が必要であること、3箇月以内に限るため繰り返して申出が必要であること、権利の移転自体を禁止する制度ではないことなど、制約があります。
▼登記済権利証等がない登記
登記済権利証や登記識別情報通知を紛失した場合、あるいは前記の「登記識別情報の失効の申出」をした場合に、その後、抵当権設定や売却により、それらに基づく登記申請が必要となった場合に、登記申請の方法が気になるかと思います。
これについては、方法としては、次の3つの方法があります。
登記申請後、法務局からの事前通知により本人へ照会する制度を利用する、
弁護士、司法書士等による本人確認制度を利用する
公証人による本人認証制度を利用して登記申請を行う
それぞれの詳細を解説することはここでは避けますがが、登記時に資金の移動を伴う売買等の同時決済の取引の場合、現実的には、前記1.の法務局からの事前通知は選択しにくく、2.か3.の専門家による本人確認(本人認証)の制度を利用することとなります。
ただし、2.や3.については、手間と費用が発生しますので、登記済権利証等を紛失しないようにすることが大切であることは言うまでもありません。
【最後に】
①登記済権利証(登記識別情報通知)、②印鑑証明書(あるいは印鑑カード)及び③実印(を押した書類)の3点(さらに本人確認書類も含めて)の厳格な管理を引き続きお願い致します。
立花司法書士事務所 司法書士・立花幸嗣
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