皆様こんにちは。税理士の出川です。
前月号と前々月号では、相続税の税額計算の基本・相続分の考え方についてお話させて頂きました。本稿では、いよいよ相続対策についてお話をさせて頂きます。
▼相続対策の四本柱
相続対策というと「何をすれば良いかわからい」といったお声を多く頂戴します。わからないからご不安も増すばかりですよね。しかし、やるべきことさえ明確になれば、ご不安も解消されるはずです。
私たちが相続対策のお手伝いをさせて頂く時は、論点を左記の4つに区分して考えていきます。
相続対策の四本柱は、バランスよく行うことが大事ですが、優先順位があります。
第一順位:遺産分割対策
第二順位:納税資金対策
第三順位:生前贈与・評価引下対策
本稿では、優先順位の高い「遺産分割対策」と「納税資金対策」について、お伝えしていきます。これらの対策は、相続(財産の承継と相続税の納税)を円満に終わらせ、故人の想いと財産を後世に引き継ぐための対策です。残り2つの対策は、相続税額を引き下げるための対策です。私見ではありますが、第一順位、第二順位の対策と比べて、優先順位はやや落ちると考えます。
▼遺産分割対策
遺産分割とは亡くなった方の財産について、どの相続人がどの財産を引き継ぐかを決めることです。相続税がかからない方でも、相続人が2人以上いる場合には必要です。遺産分割が円満に決まらないと、同居人に自宅を残せないかもしれませんし、後継者に事業資産を残せないかもしれません。
また、相続税がかかる方については、税額計算上の様々な特例を適用出来ず、必要以上に税額が高くなる可能性もあります。「遺言」や「家族信託」等を活用し、争族リスクの回避を検討しましょう。
▼納税資金対策
相続税の申告・納税期限は、相続発生日から10ヵ月経過日です。現金納付が大前提ですが、現金がない場合には、①延納(分割納付)②物納(相続財産で納付)も可能です。納税方法はいずれでも良いのですが、納税可能かどうかを事前に把握しておくことが重要です。納税期限は待ってくれないのです。
現金があればよし、なければ物納又は延納を検討するのか、不動産を外部に売却して資金確保するのか、後世に残したいのであれば、売却せずして現金を作る方法はあるのか、などです。
▼万里の道も現状把握から
対策の実行も重要ですが、最も重要なことは「現状把握」です。課題を発掘してこその対策ですからね。まずは「相続税診断」で税額を把握し、「納税資金診断」で資金余剰を確認してみて下さい。相続対策は、勇気ある第一歩が結果を大きく左右します。
今回で『相続税の“仕組み”』の解説は終了となります。ご不安な点やご質問は顧問税理士もしくは著者の方にお気軽にご相談ください。
税理士法人アイユーコンサルティング 関東事務所長・税理士 出川裕基
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