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老朽化マンション建て替えやすく 建て替え要件の緩和に向けた改正の動き

 令和5年11月、老朽化マンションの再生や管理を目的とする諸対策を定めた改正要綱のたたき台となる案が示されました。政府は、同案をもとに来年の通常国会における改正案提出を目指しています。


▼マンション対策は社会課題に

 令和3年、全国の築40年以上の分譲マンション戸数は115.6万戸であるところ、国土交通省は、今後およそ20年でその数が3.7倍の425.4万戸に増加すると推計しています。高経年のマンションの増加とともに懸念されていることが、建物の老朽化にともなう安全性などの低下と、所有者の高齢化にともなう所有者不明化・連絡不通といった「2つの老い」に起因する問題です。

 この問題を解決すべく、マンションの再生や管理を円滑に進めるための対策が喫緊の課題とされてきました。


▼注目される建て替え要件の緩和

 対策の一つとして検討中である、マンションの建て替えに関する要件の緩和の案が注目されています。主な改正案は次の3つです。


①所在不明者を決議の母数から除外

 現行制度におけるマンションの建て替え決議の要件は、マンションの所有者全員の5分の4以上の賛成があることです。連絡の取れない所在不明などの所有者がいると、それらは反対票扱いとなるため、古いマンションにおける決議のハードルはかなり高いものになっています。改正案では、所在不明者を母数から除外し、所在の明らかな人のみで議決割合を判定できるよう対策されています。


②4分の3以上で建て替え可能に

  改正案では、耐震性などに問題のある一定のマンションを対象に、現行制度の「5分の4以上の賛成」から「所在の明らかな所有者の4分の3以上の賛成」で建て替えを決議できるよう、議決割合を引き下げることも目指しています。実現すれば、建て替えの必要性が高いマンションほど早く建て替えられるようになります。

 

③借り主への対応方法の拡大

 マンションの借り主が建て替えに反対している場合、建て替え決議がなされても協力してもらえず工事などの作業が円滑に進められないことがあります。現行制度では、こうした借り主に法的に対処できるケースが限られており、多くは個別に交渉を重ねるしかありません。賃貸借契約が短期であれば別の対処法も考えられますが、長期の場合、建て替えが進められない要因となってしまいます。

 改正案では、建て替え決議がなされた場合、建て替え決議に賛成した所有者など一定の者から借り主に対して、6か月後の賃貸借の終了を請求できるようにすることを目指しています。ただし、所有者らが立ち退き費用などを補償することが条件です。個別の交渉で解決できない場合の対処法が拡大し、オーナーにとって円滑な建て替え工事の進行が期待できます。


一級FP技能士 石田夏

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