▼小規模宅地等の特例とは
小規模宅地等の特例とは、昭和58年に創設された相続税の特例です。「宅地等」とは、土地の他、土地の上に存する権利(借地権等)にも適用できることを意味しています。
特例が設立された経緯は、バブルによる地価高騰で、相続税が支払えず、生活基盤を失うことを防ぐためです。これが今も、被相続人やその親族の居住用・事業用で使用される土地に活用されています。
今回のテーマは、多くの方に利用機会のある、居住用の土地(=自宅の敷地)に対する利用条件です。
年代とともに家族のあり方が変化する中で、小規模宅地等の特例も、適用要件が見直されています。
▼特例の適用要件とは
特例の適用要件には、生前の用途・相続後の用途にポイントがあります。
ただし、配偶者(=被相続人の夫や妻)が相続する場合は、特に要件なく特例を適用できます。したがって今回は、被相続人のお子さんが被相続人名義の宅地を相続する場合で、適用条件をパターン別に整理します。
▽親と子が同居している
・子が相続すれば特例の対象です。
・子は相続税の申告期限まで、継続してその土地を保有し、居住しなければなりません。
▽親と子が二世帯住宅で同居している
・子が相続すれば、原則、敷地全体が特例の対象です。
・子は、相続税の申告期限まで、継続してその土地を保有し、居住しなければなりません。
・ただし一つの建物を親子で区分所有している場合、親の居住部分に相当する敷地分しか、特例の対象になりません。つまり、敷地全体に対して使えなくなるということです。(同一生計の親族として、別の要件で適用できる可能性はあります)
▽親が一人暮らしをしている
・親に配偶者が居ない場合、子が相続すると特例の対象になります。
・子は、相続税の申告期限まで、継続してその土地を保有しなければなりません。
・ただし、子が自身や親族らの持ち家で生活したことがあると、対象外になるケースがあります。
【対象外になるケース】
①相続開始前3年以内に、子、子の配偶者、子の3親等内の親族、子が支配するなど子と特別関係にある法人が所有する住宅に居住している場合
②相続開始時に子が住んでいる住宅を過去に子が所有していた場合
(解説)
被相続人に配偶者・同居親族(相続人)が居ない時のいわゆる「家なき子」の特例です。
①自分以外の親族に持ち家を所有させて特例を使うことや、②自分名義の家を他人の名義に変えて特例を使うことができないようになっています。
▽親が老人ホーム等に入所して空き家になっていた
・親が要介護・要支援認定を受けている等の一定の事由に基づいて入所している場合、特例の対象になります。
【対象外になるケース】
空き家になった後、別生計の親族が代わりに住み始めたり、賃貸を始めたりすると、対象外になります。
▽親名義の土地に子が家を建てて住んでいる
・親と子が「同一生計」であれば、子が敷地を相続すると特例の対象になります。
・子は、相続税の申告期限まで、継続してその土地を保有し、居住しなければなりません。
一級FP技能士 石田夏
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