前回①では、賃借人が賃貸物件内に荷物を置いたままいなくなってしまったものの、現在の居所が判明しているケースについて説明しました。
賃借人の居所が判明していれば、裁判所に求め、居所に対して訴状を送ってもらうことができますし、賃借人が訴状の受取りを拒絶すれば訴状を送ったものとして扱って欠席判決をしてもらうこともできます。
▼賃借人の住所が不明の時
賃借人の居所が不明であるケースは少し面倒なことになります。
最終的には、裁判所に設置された所定の掲示板に掲示することで、訴状や判決等を賃借人に送ったことにできますが(これを「公示送達」といいます)、そのためには賃借人の居所が不明であることを調査して裁判所に報告しなければなりません。
通常は、弁護士の報告書(最新の住民票に記載された住所地には居住しておらず、職場にもおらず、連絡が付かない旨を資料を添えて記載したもの)を提出すれば、公示送達をしてもらうことができます。
このように賃借人の居所が不明なケースであっても、欠席判決を取得して強制執行することができます。ただし、賃借人と連絡がつかないため、賃借人と協議して残置物を買い取るという方法がとれないことから、余計な時間とコストがかかることは覚悟する必要があります。
▼賃借人が死亡しているケース
問題は賃借人が死亡しているケースです(賃借人が死亡しているかどうか分からなくても、戸籍に死亡した旨の記載がなければ、生きているものの居所不明なケースと同様の法的手続で処理することができます)。
賃借人が死亡すると、死亡の瞬間にその全ての権利義務を相続人が相続することになるため、交渉相手は賃借人の全ての相続人になります。
▽対応方法
賃借人が生まれてから死ぬまでの全ての戸籍を取り寄せて法定相続人を調査し、全ての法定相続人に対して事情を説明した内容証明郵便を送付して相続放棄をするかどうかを確認しなければなりません。
賃借人の死亡の事実を知った時点から3か月以内であれば、賃借人の法定相続人は相続放棄をすることができます。こちらから賃借人の法定相続人に対して賃借人の死亡及び債務の存在を告げ、少なくとも内容証明郵便を受け取った日から3か月が経過すれば相続放棄ができなくなります。
弁護士が事情を説明した手紙(相続放棄をしなければ未払賃料や明渡費用の負担を求める訴状が届くことになる旨が記載されたもの)を送ると、大抵の人は相続放棄をしてその証明書のコピーを返送してくれます。
このようにして全ての法定相続人と連絡を取り、最終的な相続人を確定する作業をすることになります。
法定相続人と連絡がつかないときは、最新の住民票に記載された住所に訴状を送ってもらい、返戻されたら居住調査を経て最終的には公示送達の手続に流れることになります。
元弁護士Y
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