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「税制改正情報」税制改正で生前贈与が使えなくなる?

 令和2年12月、自民・公明両党による「令和3年度税制改正の基本的考え方」で示された、相続税・贈与税一体課税に関する記述から、この一年間、「生前贈与が使えなくなるのではないか」との憶測が広がっています。


▼生前贈与とは

 贈与税の原則的な課税方法である暦年課税では、一年間を課税期間とし、その間に受けた贈与財産に対して受贈者が贈与税を負担します。贈与税の税率は、同額の財産にかかる相続税よりも割高ですが、暦年課税には必ず110万円の基礎控除が適用されます。

 つまり、一年間に贈与を受けた財産額が110万円以下であれば、贈与税は0円です。これを利用し、基礎控除額以下の金銭を、親から子、祖父母から孫などに、生前のうちに毎年贈与する相続税対策が行われています。

 ポイントは、相続(被相続人→相続人等)だと相続税がかかる財産でも、贈与(生前の被相続人→相続人等)であれば、非課税で財産を移転できることです。

 このように、財産が移転するタイミングが違うというだけで、税負担が変わるのが、今の日本の相続税・贈与税になります。

 なお、現行法には、①3年間の生前贈与加算と、②相続時精算課税制度があります。

 ①は生前3年間の贈与のみ相続税の課税対象とするものですが、富裕層は若いうちから毎年贈与ができるため関係ありません。

 ②は、一度選択すれば、その贈与者・受贈者間の贈与がすべて相続税の課税対象になる制度です。2,500万円の贈与税の非課税枠はありますが、計画的に毎年贈与ができれば不要な制度であり、そもそも相続税対策にならないため、あまり普及していないのが現状です。


【注意】連年で定額を贈与する場合、定期給付の贈与契約をしたとみなされてしまい、契約をした年(贈与開始年など)に、後年の贈与分をまとめて課税対象とされてしまうおそれがあります。また、詳しくは省略しますが、名義預金にあたればそもそも贈与にはならず相続税の課税対象となるため、相続対策にならないおそれもあります。


▼相続税と贈与税の一体課税とは

 それではにわかに注目されている、相続税・贈与税の一体課税とは何か。 

 結論からいいますと、現時点では詳しいことは何も決まっていません。

 現段階でわかっていることは、概ね次のような内容が「令和3年度税制改正の基本的考え方」に盛り込まれていることだけです。

  • 現行の制度では、富裕層による財産の分割贈与を通じた租税回避を防止できていない

  • 外国には、贈与と相続を累積して相続時に課税している制度もある。

  • 諸外国の制度を参考にし、相続税と贈与税をより一体的にとらえて課税するよう、現行制度の見直しを検討する。


 ちなみにアメリカは、生前贈与の額と遺産額を合わせた生涯の資産移転額で一体課税されています。フランスは生前の15年、ドイツは生前の10年の期間設定のもとで一体課税されていて、日本の3年よりも長く設定されています。


▼税制改正は毎年チェックを

 この公表を受けて、今後どのような見直しが行われるか、税制改正大綱の発表が待たれています。

 贈与税と相続税が一体化するのか、それとも現行の「3年」が伸びるのか、あるいは110万円の基礎控除を引き下げるのか…など、憶測が飛び交っている状況です。

 「今のうちに生前贈与をしておこう」と考えてしまいそうですが、実際には何がどう変わるのか、令和4年度税制改正大綱は、ぜひ資産税の項目をチェックしてみましょう。


一級FP技能士 石田夏


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