top of page

借地権のメリット・デメリット②相続編

▼借り手(借地権者)の相続

 借地権者が亡くなると、その相続人が新たな借地権者となります。その際に、借地権が相続税の課税対象になることがあります。相続税は財産の種類ごとに決められた方法で計算した評価額に対して発生します。借地権の計算式は次のとおりです。


 自用地の評価額×借地権割合


 借地権に相続税がかかるのは借地権の設定に権利金を支払う慣行のある地域となります。国税庁の路線価図や倍率表に借地権割合が設定されていれば、一般にこの慣行のある地域と考えられます。


・使用貸借との違い

 借地契約が「賃貸借」ではなく「使用貸借」であれば借地権の評価は「ゼロ」です。使用貸借とは無償(固定資産税相当額以下の地代を含む)における貸し借りをいい、借地権ほど強い権限が借り手にありません。


▼貸し手(地主)の相続

 借地権を設定した土地の地主が亡くなると、その土地は相続税の課税対象になります。この点は通常の土地の相続と同じです。ただし、その土地の評価は「貸宅地」の方法で計算します。


 自用地の評価額×(1-借地権割合)


 たとえば借地権割合70%、評価額一千万円の宅地は、借地権700万円、貸宅地300万円になります。


▼借地権(相続)のメリット

・借り手は賃貸経営を続けられる

 借地権を相続することで、借り手は賃貸経営を続けることができます。定期借地権の場合は残存年数も引き継ぎます。相続の発生は地主が拒否できるものではなく、承諾を要する性質のものでもありません。

・貸し手は貸宅地の評価ができる

 貸し手は相続で「貸宅地」の評価ができるので、遊休地として放っておくよりも相続税の節税になります。地代も得られてお得です。


▼借地権(相続)のデメリット

 借り手・貸し手両方に共通するデメリットとして、借地権の評価が難しいことがあげられます。

・まず自用地の評価が必要

 借地権や貸宅地の評価には、その土地の自用地としての評価をまず行わなければなりません。宅地の評価にはルールが多く、知らないと必要以上に高く評価してしまうこともあります。


・借地権割合で評価できないことも

 上記の方法で計算できるのは通常の地代(※1)の授受によって借地権の設定が行われているケースです。これに対し、権利金の支払いに代えて通常よりも高い地代を授受するケースでは計算方法が異なります。さらに相当の地代(※2)の支払いがあるときは借地権はゼロになり、貸宅地は自用地の8割というイレギュラーな評価になります。


(※1)通常の地代の目安

  概ね底地評価額の過去3年平均の6%

(※2)相当の地代の目安

  概ね自用地評価額の過去3年平均の6%


・定期借地権の評価に注意

 定期借地権の評価は、支払った権利金などのうち借地権者に帰属するものがある場合に評価します。評価額は定期借地権の残存年数によっても変化し、契約期間に対し残存年数が少ないほど借地権の評価額が下がるしくみです。

 借地権者に帰属するもの等の計算が非常に難しいため、計算は税理士に依頼しましょう。


▼借地権の税務は相談を

 借地権の設定は借り手と貸し手の双方にメリットがありますが、税務には相続以外にも注意点が存在します。

 たとえば、借地権の設定に権利金を支払う慣行がある地域でそれを支払わずに借地権を設定すると、原則、個人には贈与税、法人には法人税の課税が生じます。借地権を設定するときは専門家に相談しましょう。


ファイナンシャル・プランナ― 石田夏


閲覧数:5回
bottom of page