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【法律】家賃滞納時の法的対処方法③



 今回は、家賃滞納時に判決(建物退去及び賃料相当損害金請求訴訟)が出てしまうと、賃貸人にとって非常に残念なことになるということについてお話します。

▼強制執行

 判決が出て上訴(控訴・上告)されずに確定すると、その判決に基づいて強制執行をすることができます。

しかし、強制執行の費用は賃貸人が負担しなければなりません(法律的には、後日、賃借人に対して求償することができますが、家賃を滞納するような賃借人には支払能力がありませんので、賃貸人が泣くことになります)。

 そもそも、強制執行とは、執行官が現場に立ち会い、執行官の面前で物件の中から全ての荷物を運び出すことをいいます。

 想像してみてください。事前に自分で荷物を梱包した上で引越屋に頼んだとしても、引越しは一日仕事です。執行官は複数の事件を抱えているため、執行官を一日拘束するわけにはいきません。二時間から三時間程度で全ての荷物を運び出すためには、人海戦術をとる(大勢で一気に運び出す)しかありませんので、高額な人件費かかることになります。

 また、運び出した荷物は、賃貸人(強制執行の申立人)の側で責任をもって保管する必要があります。通常は倉庫を借りて、その倉庫に運んでもらって保管するわけですが、その後は倉庫の保管料を継続的に負担しなければなりません(もっとも、倉庫の保管料については、建物退去請求と同時に賃料相当損害金請求をし、運び出した荷物の時価相当額を超える損害金を認める判決が出れば、建物明渡しの執行申立てと同時に動産差押えを申し立てることができます。そうすると、執行官にその場で競売に付してもらい、賃貸人が買い取り処分をすることができますので、倉庫の保管料の負担は回避することができます)。


▼執行にかかる費用

 これらの手続きにかかる費用ですが、控訴されなかったとして、弁護士費用だけで最低でも50万円(強制執行が必要であれば、更に30万円程度。ただし、これは最低額であり、物件の価値等によって弁護士費用は増えます)、強制執行の実費として30~50万円が必要です。

 つまり、提訴→判決→強制執行というフルコースになると、100万円から150万円の費用がかかることになります。


▼執行までにかかる時間

 費用だけでなく時間もかかります。賃借人が裁判の第一回期日を欠席する最短コースであっても、提訴から判決が確定するまでに2か月は必要です。

 賃借人が争えばすぐに半年はすぎますから、判決が出るまで10か月程度はかかるでしょう。控訴されれば、控訴棄却判決が出るまで3~4か月はかかります。その後、強制執行の申立てをし、執行官が事前に現場に臨場して強制執行の計画を立て(この際、賃借人に対して一か月程度の期限を区切って任意の立退きを求めます)、強制執行の申立てをしてから実際に強制執行を行うまで2か月はかかります。

 つまり、提訴→判決→強制執行とうフルコースになると、1年から1年半程度の時間がかかることになり、賃貸人は、その間の賃料収入を得ることができなくなるという損失も受けてしまいます。

 次回(最終回)に続きます。


(元弁護士Y)

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