前回はインスペクションの盛り込まれた法整備について、その背景などをお伝えいたしました。
今月号ではインスペクションで、調査する内容をアパート・マンションのインスペクションについて説明していきます。
国土交通省では、売買時点の住宅の状況を把握できるインスペクションについて「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を2013年6月に策定しています。
このガイドラインの特徴のひとつは「中古住宅の売買時の検査」に限定しているということです。
(国土交通省ホームページ http://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000464.html )
インスペクションについては「現場で検査を行う者の技術力や検査基準等は事業者ごとにさまざまな状況」にある事を前提に、ガイドラインを策定することで「どの検査事業者が行ったかによらず同様の結果が得られる」ようにして「インスペクションの適正な業務実施、トラブルの未然防止」を図ろうという内容です。
▼調査方法
具体的な調査方法としましては、目視を中心に住宅の傾きやひび割れの大きさなどを測る一般的な計測器を用いるまでを基本としています。
詳細なインスペクションを行うには、電磁波レーダー等を用いた鉄筋探査やファイバースコープカメラ等の非破壊検査機器を用いた調査等になります。これらは一定の追加費用の負担が生じることから、追加的に実施調査されることが考えられます。
ただ今後、非破壊検査機器の技術開発や普及による推定精度の向上やコストダウン等の状況変化によっては基本の調査方法に追加されるかもしれません。
さらに「破壊調査」を行うことでより踏み込んだ検査となりますが、それには住宅所有者の同意
を得る必要があることから、対象外とされているようです。
このような検査方法で、チェックリストなどを活用しながら対象部位ごとに劣化事象の有無を確認
し、次のような劣化事象を写真も含め書面にて報告書にまとめます。
【主な劣化事象】
構造耐力上の安全性に問題のある可能性が高いもの(例:蟻害、腐朽や傾斜、躯体のひび割れ・欠損等)
雨漏り・水漏れが発生している、または発生する可能性が高いもの
設備配管に日常生活上支障のある劣化等が生じているもの(例:給排水管の漏れや詰まり等)
また、前述したようにインスペクションは「目視可能な範囲に限定」されているものの、隠れている部分についても、目視できなかったことを記録・報告することとされています。
こうした(中古)アパート・マンションのインスペクション『専有部・共用部分の目視調査』を実施することで、工法の確認、設備機器や建材などの状態や劣化状況、将来かかるであろうコストの予測、さらには将来のリフォーム時の発展性などへも活用できるのです。
BORDERLESS DESIGN 一級建築士 田主健二
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