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建物賃貸借の立退料(立ち退き料)の相場・計算方法①

 賃貸した土地や建物から賃借人に立ち退いてもらうには、賃貸借契約を解約しなければなりません。賃借人は、賃貸人からの解約申入れに対し、素直に応じてもよいし応じなくてもよいのですが、賃借人が解約申入れに応じない場合に裁判所に立退きを命じる判決を出してもらうためには、解約申入れに「正当事由」がなければなりません。今回は正当事由と立退料の必要性について解説致します。


▼正当事由の4段階

 「正当事由」は、貸主側と借主側それぞれの土地や建物の利用の必要度に応じて判断されます。利用の必要度は、

 ①死活にかかわる

 ②死活にかかわるほどではないが切実である

 ③切実であるとまでは言えないが望ましい

 ④望ましいとも言えない単なるわがまま

の4段階に分類できると言われています。

 借主側に死活にかかわる事情がある場合には、貸主側の事情の深刻度にかかわらず正当事由は認められません。また、借主側にわがままな事情しかない場合には、貸主側に死活にかかわる事情や切実な事情があれば立退料の提供なくして「正当事由」が認められ、望ましい事情や貸主側の単なるわがままな事情であったとしても立退料の提供をすれば「正当事由」が認められると言われています。


▼双方に切実な事情や望ましい事情がある場合

 問題は、借主側にも貸主側にも切実な事情や望ましい事情がある場合です。分かりやすいように貸主側の視点で整理してみます。

※〇は正当事由あり、×は正当事由なし、△は正当事由が認められるケースもあれば否定されるケースもあるという意味です

※本稿の整理は「借地借家の正当事由判定事例集」(澤野順彦著、新日本法規)に拠りました


  •  貸主側に死活にかかわる事情がある場合には、借主側に死活にかかわる事情があれば立退料の提供をしても×、切実な事情や望ましい事情があれば立退料の提供をすれば、単なるわがままな事情であれば立退料の提供をせずとも

  • 貸主側に切実な事情がある場合には、借主側に死活にかかわる事情があれば立退料の提供をしても×、切実な事情があれば立退料の提供をしても、望ましい事情があれば立退料の提供をすれば、単なるわがままな事情であれば立退料の提供をせずとも

  • 貸主側に望ましい事情がある場合には、借主側に死活にかかわる事情があれば立退料の提供をしても×、切実な事情があれば立退料の提供をしても、望ましい事情やわがままな事情であれば立退料の提供をすれば

  • 貸主側の単なるわがままな事情の場合には、借主側に死活にかかわる事情や切実な事情があれば立退料の提供をしても×、望ましい事情があれば立退料の提供しても、わがままな事情であれば立退料の提供をすれば


 立退料の金額は、借主側と貸主側の必要度の強弱によって異なります。同じであっても、貸主側の必要度が弱く借主側の必要度が強ければ、その差を埋めるためより多額の立退料が必要になるというわけです(続く)。

元弁護士Y

 
 

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