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建物賃貸借の立退料(立ち退き料)の相場・計算方法②

▼立退料の相場

 立退料の金額は「借主側と貸主側の必要度の強弱」によって異なります(最高裁平成3年3月22日判決によると、立退料は「建物の明渡しに伴う利害得失を調整するために支払われるもの」になります)。

 貸主側の必要度が弱く借主側の必要度が強ければ、その差を埋めるためより多額の立退料が必要になるわけですが、具体的にいくらになるかはケースバイケースとしか言えず、算定式が存在するわけでもありません。

 しかも、立退料の金額をいくらにするかは、賃貸人の申出額や鑑定結果に拘束されず裁判所が自由裁量で認定できるとするのが判例であり、判決中で明確な算定根拠が示されているわけでもありません。逆に言えば、明確な算定根拠を示すことが困難であるからこそ、裁判実務では裁判官がこれまでの実務経験に基づく相場観で決めているのでしょう。


▼立退料の内容

 これまでの裁判例を整理すると、立退料の内容として次のものがあります。


①移転実費

 移転実費は、引越費用、移転先の物件の仲介手数料・礼金・権利金・敷金・保証金、新旧の賃料の差額補償、移転通知費用等があります。このうち敷金は今の敷金との差額、新旧家賃の差額補償は1~2年分が相場とされています。


②借地権・借家権価格の保証

 賃貸人が建替えや再開発等で利益を得る場合はその開発利益の配分も対象になります(参照:国土交通省「不動産鑑定評価基準」)。

 なお、弁護士や裁判官では借地権や借家権の価格を計算することはできませんので、専門家に鑑定を依頼してその鑑定書を見て判断することになります。


③賃借人が支出した費用

 賃貸物件に関して支出した建物、造作、必要費、有益費などで、賃借人に「建物買取請求権」「造作買取請求権」「必要費償還請求権」「有益費償還請求権」が認められる場合には、それらの費用補償が必要になります。


④慰謝料

 賃借人の生活基盤を変更させることに対する慰謝料のことです。


⑤解決金

 賃貸物件で営業をしていれば営業補償が必要になります。

 ④と⑤の2つは、賃借人の気持ちの問題になりますので、まさにケースバイケースの最たるものです。


⑥営業補償

 事業用の場合は、早期明渡しを実現するための解決金で、国土交通省が「公共用地の取得に伴う損失補償基準」(平成13年1月6日国土交通省訓令第76号、平成15年8月5日国総国調第57号)を公表しています。

 これによると、営業権、資産や商品の売却損、従業員を解雇するときの解雇予告手当相当額に加えて、おおむね6か月から1年程度の経費と2~3年程度の利益が営業補償の目安となります。


 このように立退料が争われると大変な手間と時間がかかるため、賃貸人側の事情を丁寧に説明して明渡しの必要性を理解してもい、賃借人が納得するお金を渡すことが早期解決の近道といえます。

      元弁護士Y


 
 

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