▼世帯構造の変化による空き家増加
平成30年住宅・土地統計調査によると、総住宅数のうち、13.6%の848万9千戸が空き家であり、20年で約1.5倍に増加していることがわかりました。空き家増加の背景には、世帯数の増加と高齢化があります。
右の表は、国民生活基礎調査結果から、世帯構造の変化を比較したものです。総世帯数は約30年で約38%増加し、主に単身世帯・夫婦のみ世帯の増加が目立ちます。ちなみに2019年の総世帯数の28.7%が高齢者世帯で、今後ますます相続で空き家が増えることが予想されます。
▼自治体による空き家対策の強化
自治体では、管理不十分な特定空き家に対する行政処分の整備や土地基本法を制定するとともに、固定資産税の特例対象から空き家を排除するなどの対策を展開しています。
もともと空き家は、管理費や税が発生し、さらに近隣住民に損害を与えれば民事上の賠償責任が発生することが懸念されていましたが、行政が動き始めたことで、空き家問題は一層無視できないものとなっています。
▼空き家の相続対策になる相続放棄
▼相続放棄とは
売れない・貸せない・住まない状態の家を相続したときの対策の一つに、相続放棄があります。
相続放棄とは、相続によって承継するすべての権利と義務を放棄する手続きのことです。家庭裁判所に認められれば、最初から相続人でなかったことになります。
相続放棄をすれば、被相続人の借金などの負債を引き継がずに済むため、管理コストや売却コストが収益性や資産価値に見合わない財産しかない場合には有効な選択といえます。
しかし、すべての財産を得る権利を失う点は注意が必要です。
▼相続放棄は3か月以内に
家庭裁判所に対し、相続放棄の申し立てができるのは、自己のために相続の開始があったことを知った日から3か月以内です。この3か月の期間を熟慮期間といい、これを過ぎると、単純承認したものとみなされます。
その後は、原則、相続放棄はできません。またこの期間中に遺産の一部を分けたり処分したりする行為があると、単純承認があったとみなされますので注意が必要です。
▼期限延長の手続きもある
相続財産の調査をしても相続放棄の判断をする資料が十分に得られないときは、相続放棄の期限延長を申立てることができます。この申立ても3か月以内に行う必要があります。
▼相続放棄と限定承認の違い
限定承認とは、相続する遺産を上限に債務を負うことです。債務の全額がはっきりわからないときに有効ですが、相続人でありつつ、債務を負う範囲を限定する方法ですので、限定承認をしても、債権者のために公告や弁済のため遺産を売却するなど諸手続きが必要になります。
この点で、相続人の地位を失う相続放棄とは根本的に異なる選択といえます。また、相続放棄が相続人単独で選択できることに対し、限定承認は、相続人全員の合意を必要とします。
限定承認も、相続放棄の手続きと同様に、自身が相続人であると知ったときから3ヶ月以内に手続きを行わないと、自動的に単純承認となりますので注意が必要です。
一級FP技能士 石田夏
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