最高裁判所は、令和4年12月12日、家賃保証会社フォーシーズ株式会社(4C‘S)の保証契約条項の一部が違法であると判断し、上記条項に基づいて家賃保証契約を締結してはならず、上記条項が記載された契約書用紙を廃棄するように命じました。
▼裁判の争点
フォーシーズは家賃保証会社です。賃借人は、賃貸人と賃貸借契約を締結する際、フォーシーズに保証委託料を支払って賃貸借契約の保証人になってもらいます。
保証委託料は年払いで、最初の1年目は家賃1か月分ですが、賃借人が家賃を滞納しなければ、2年目以降の委託保証料は年額1万円となります。
賃借人が家賃を滞納したときは、フォーシーズが賃貸人に滞納金を支払います。この場合、賃借人はフォーシーズが賃借人の代わりに支払った滞納金に年14.5%の延滞金を上乗せした金額
をフォーシーズに支払わなければなりません。
最高裁が問題視した契約条項は、賃借人の滞納額が家賃の3か月分以上になったとき、フォーシーズが賃借人に何らの催告をせずに賃貸借契約を解除することができるとしている点です。
家賃が滞納されたとき、賃貸人が賃貸借契約を解除するのは当たり前の話です。しかし、保証人の立場にすぎないフォーシーズが賃貸借契約を解除できると規定していたことから、そのような契約条項が違法かどうかが争われました。
▼最高裁判決の論点
一審(大阪地裁)も控訴審(大阪高裁)も合法であると判断しましたが、最高裁は違法であると判断し、フォーシーズに対し、冒頭の措置を命じました。
最高裁は、今回いくつかの重要な判断を示しましたが、賃貸経営者が知っておくべきであると思われる部分は次の箇所です。
①一般に、賃借人に賃料等の支払の遅滞がある場合、原契約の解除権を行使するこ とができるのは、その当事者である賃貸人であって、賃料債務等の連帯保証人ではない。
②上記の場合において、賃料債務等につき連帯保証債務の履行がないときは、賃貸人が上記遅滞を理由に原契約を解除するには賃料等の支払につき民法541条本文に規定する履行の催告を要し、無催告で原契約を解除するには同法542条1項5号に掲げる場合等に該当することを要する。
③上記の連帯保証債務の履行があるときは、賃貸人との関係においては賃借人の賃料債務等が消滅するため、賃貸人は上記遅滞を理由に原契約を解除することはできず、賃借人にその義務に違反し信頼関係を裏切って賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような 不信行為があるなどの特段の事情があるときに限り、無催告で原契約を解除することができるにとどまると解される。
最高裁は、前述のように一審二審を覆す重大な判断を示しました。これにより、保証会社の利用方法をより慎重に考える必要性が高まったといえます。
次回、家賃保証会社を利用する賃貸経営者の立場からどうすべきかでについてお伝えします。
元弁護士Y
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