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賃貸物件に空室がある場合の土地や家屋の相続税評価方法について

▼貸し物件の相続税評価

 貸し物件の購入が相続税対策になる理由は、一般的に貸し物件の相続税評価額が、購入価格よりも低いことにあります。しかし、相続発生時に空き室があると、貸し物件の評価額の上昇につながるため注意が必要です。


▽評価額が低くなる2つのポイント

 貸し物件の相続税評価額が購入価格より低くなるポイントは2つあります。

 1つは不動産の評価のしくみです。あくまで目安ですが、建物は購入価格の5~7割、土地は8割程度の評価額になります。

 もう1つのポイントは、貸し物件が相続発生時に実際に賃貸中であると、建物は「貸家」、土地は「貸家建付地」として評価できることです。

 貸家は通常の建物の評価額から「借家権割合」(30%)に相当する額を、貸家建付地は通常の土地の評価額から「借地権割合×借家権割合」(9%~27%)に相当する額を、それぞれ減額することができます。

 ただし、アパートやマンションのように、建物内に独立して賃貸できる部分が複数ある場合は、減額分に「賃貸割合」を乗じなければなりません。


▽貸家・貸家建付地の計算方法

貸家

 固定資産税評価額×(1‐①×賃貸割合)

貸家建付地

 自用地評価額×(1‐①×②×賃貸割合)

 ・①:借家権割合(30%)

 ・②:借地権割合(30%~90%)

 (※)宅地の自用地評価額は、路線価方式または倍率方式で計算します。


▽賃貸割合の計算方法

 賃貸割合とは、賃貸可能な部分の床面積に占める、相続発生時に賃貸している床面積の割合です。

 例えば、床面積がすべて同じ10室のマンションにおいて、相続発生時に5室が空室だった場合、賃貸割合は50%になります。


賃貸割合A/B

 ・A:賃貸中の各独立部分の合計床面積

 ・B:各独立部分の合計床面積


▼空き室がある場合の相続税評価

 貸し物件が満室であれば賃貸割合は100%です。この場合、相続人は貸家・貸家建付地における評価減の恩恵を最大限に受けることができます。

 しかし、貸し物件に空き室がある場合、賃貸割合が減少するため、減額の恩恵が小さくなり、貸し物件の評価額が上昇します。

 

▽空き室がある場合の計算例

 空き室による影響を、具体例で確認しましょう。貸家・貸家建付地(固定資産税評価額・自用地評価額はそれぞれ1千万円)、借地権割合70%、借家権割合30%を例に計算します。

 ・賃貸割合100%(満室)

  → 貸家の評価額:700万円、貸家建付地の評価額:790万円

 賃貸割合50%(半分空き室)

  → 貸家の評価額:850万円、貸家建付地の評価額:895万円

 ・賃貸割合0%(賃貸していない)

  → 評価額:各1千万円ずつ

 

(注)次のような事実関係から一時的な空き室と認められる場合、相続発生時に賃貸していたものとして相続税を計算することができます。

・各独立部分が相続前から継続的に賃貸されてきた

・賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室の期間中、他の用途に供されていない

・空室の期間が、相続前後の例えば1か月程度など、一時的な期間である

・相続後の賃貸が一時的なものでない


▼空き室対策を見直そう

 空き室対策は、安定した賃貸収入を得られるだけでなく、将来の相続税対策にも役立ちます。築年数が経っているからといって放置せず修繕や設備などどを見直し、しっかり対策していきましょう。

一級FP技能士 石田夏


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