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〈賃貸駐車場の困りごと〉車上荒らしと駐車場オーナーの責任

 駐車場を賃貸借している場合、その駐車場内での車上荒らしや盗難があった場合、貸主の責任は問われるのかを見ていきます。


▼使用収益させる義務

 賃貸借契約を締結すると、賃貸人には目的物の使用収益をさせる義務が発生し、賃借人には契約中は賃料を支払い、契約終了後は目的物を返還する義務が発生します(民法六〇一条)。

 このうち賃貸人の使用収益させる義務は、使用収益に適した状態で賃借人に目的物を引き渡すだけではなく、目的物の引渡し後も目的物を使用収益できる状態を維持する義務(保存管理義務)まで含むと解釈されています。


▼賃貸人の法的責任

 駐車場の賃借人が車上荒らしにあって車内の荷物や車のパーツを盗まれたり、車そのものを盗まれたりしたとき、駐車場の賃貸人は法的責任を負うのでしょうか。

 近隣の駐車場で車上荒らしが頻発していたり、当該駐車場でこれまで何度か車上荒らしの被害が実際に発生していたり、賃借人から防犯カメラや照明等の設置を要求されていたりしたといった事情があるときに結論は変わるのでしょうか。


 賃貸人が法的責任を負うのは、賃貸人に契約違反(債務不履行責任)があった場合です。前述したとおり、賃貸人の法的義務は目的物を賃借人に使用収益させることであって、目的物を使用収益している賃借人の所有財産を盗難等から保護することではありません。

 しかし、賃借人が目的物を安心・安全に使用収益するためには、賃貸人としても盗難や火災等の被害にあわないように配慮したほうがよいことは間違いありません。とはいえ、このような義務は賃貸借契約から当然に導かれるものではなく、特約や信義則上の付随義務として認められる余地があるものにすぎません。

 要するに、通常は賃貸人の法的責任が認められることはないものの、賃貸借契約の個別具体的な内容によっては賃貸人の法的責任が認められてしまう場合があり得るといった整理になります。


▼判断となる基準について

 確立した裁判例があるわけではないため、はっきりとした基準をお伝えすることは難しいのですが、賃貸借契約において、

  1. 防犯について特別な合意をしない

  2. 駐車場内での盗難や事故等について賃貸人は一切の責任を負わない旨の免責条項を明記する

形であれば、賃貸人が法的責任を問われることはまずないと考えてよいでしょう。

 ただし、賃借人が賃貸借契約を締結する際は、契約締結時点における賃貸物件の防犯体制等を前提としていますので、賃貸借契約締結時には照明や防犯カメラが設置されており、賃借人が既存の防犯体制を信頼して賃貸借契約を締結したというような事情が認められるときには、賃貸人に賃貸借契約締結時の防犯体制を保存管理する義務が認められる可能性が高まります。

 特に、照明や防犯カメラの故障を賃借人から指摘されていたのに、修理をしないまま放置し、照明や防犯カメラが機能していたときには発生しなかった車上荒らしが発生したときは、賃貸人はかなり厳しい法的立場に追い込まれることになるでしょう。

        (元弁護士Y) 

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