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「更新料不払い」と契約解除②

 前回に続き、更新料に関してお伝えします。

 

 賃貸借契約の更新料特約が消費者契約法10条によって無効になるかどうかについて、最

高裁判所平成23年7月15日判決は、次のとおり判断しています。


▼最高裁判決平成23年7月15日

「賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する 基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの には当たらないと解するのが相当である。」


 消費者契約法は、消費者と事業者との間には、一般的に、情報の質、量、交渉力の格差があることを前提に、弱者である消費者を保護するための法律です。賃貸借契約に当てはめると、消費者は賃借人、事業者は賃貸人になります。

 しかし、賃貸経営者の立場からすれば、賃借人は本当に弱者なのかと疑問に思うことでしょう。この点について、保証金返還請求に関する最高裁判所平成23年7月12日判決の田原裁判官補足意見は、次のように述べています。これは賃貸経営者にとっての金言となる重要な内容です。


▼最高裁判決平成23年7月12日

「現代の我が国の住宅事情は、団塊の世代が借家の確保に難渋した時代と異なり、全住宅のうちの15パーセント近く(700万戸以上)が空き家であって、建物の賃貸人としては、かっての住宅不足の時代と異なり、入居者の確保に努力を必要とする状況にある。

 そこで、賃貸人としては、その地域の実情を踏まえて、契約締結時に一定の権利金や礼金を取得して毎月の賃料を低廉に抑えるか、権利金や礼金を低額にして賃料を高めに設定するか、契約期間を明示して契約更新時の更新料を定めて賃料を実質補塡するか、賃貸借契約時に権利金や礼金を取得しない替わりに、保証金名下の金員の預託を受けて、そのうちの一定額は明渡し時に返還しない旨の特約(敷引特約)を定めるか等、賃貸人として相当の収入を確保しつつ賃借人を誘引するにつき、どのような費目を設定し、それにどのような金額を割り付けるかについて検討するのである。

 他方、賃借人も、上記のような震災等特段の事情のある場合を除き、一般に賃貸借契約の締結に際し、長期の入居を前提とするか入居後比較的早期に転出する予定か、契約締結時に一時金を差し入れても賃料の低廉な条件か、賃料は若干高くても契約締結時の一時金が少ない条件か等、賃借に当たって自らの諸状況を踏まえて、賃貸人が示す賃貸条件を総合的に検討し、賃借物件を選択することができる状態にあり、賃借人が賃借物件を選択するにつき消費者として情報の格差が存するとは言い難い状況にある。」


 冒頭の最高裁判所平成23年7月15日判決は、田原裁判官と同じ価値判断に基づき、「賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は消費者契約法に違反せず有効である」との判断をしたものと思われます(続く)。


元弁護士Y

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