令和4年度税制改正によって、法人版事業承継税制における特例承継計画の提出期限が一年延長されました。
改正後の提出期限は、令和6年3月31日になります。
▼事業承継税制とは
事業承継では、先代経営者から後継者に、会社の株式や出資(個人事業の場合は事業用
資産)を、贈与や相続によって移転させることが一般的に行われます。このとき、生前贈与であれば贈与税、死亡に伴う相続や遺贈であれば相続税を後継者は負担しなければなりません。
事業承継税制とは、非上場会社や個人事業の承継にともなって発生する、非上場株式等や事業用資産にかかる贈与税や相続税の納税を猶予・免除できる制度です。
まずは納税猶予の適用を受け、後に一定要件を満たすことで、猶予税額の免除の手続きを行えるようになります。
▼法人版事業承継税制とは
会社の非上場株式等にかかる贈与税・相続税の納税猶予や免除の制度を、法人版事業承継税制といいます。
現在、この制度は、従来からの「一般措置」と、平成30年度税制改正で新設された「特例措置」の2つに分かれます。今回の税制改正は、後者の「特例措置」に関する改正です。
▽法人版・特例措置の改正点
「特例措置」は、一般措置よりも有利な条件で事業承継税制を適用できる、令和9年までの時限措置です。
たとえば、相続税の納税猶予割合が100%であったり(一般措置は80%)、一部の適用要件が緩和されていたりします。
その代わり、特例措置を適用するには、都道府県知事による円滑化法の認定を受ける必要があり、そのために「特例承継計画」を策定して、都道府県知事に提出しなければなりません。
延長されたのは、この特例承継計画の提出期限になります。新型コロナウイルスの影響による経営環境の変化を踏まえ、円滑な事業承継を実施するための改正です。
▼不動産オーナーの注意点
▽資産管理会社は適用対象外
事業承継税制は、資産管理会社に適用することができません。
資産管理会社とは、有価証券、自ら使用していない不動産、現金・預金等の特定資産の保有割合が総資産の70%以上である会社や、特定資産の運用収入が総収入の75%以上である会社をいいます。
▽資産管理会社の例外
資産管理会社であっても、例外的に事業承継税制の適用対象になる会社があります。
具体的には、贈与や相続の時、次のすべての要件を満たしている会社です。
①3年以上継続して、商品売買等(商品売買や資産の貸付)または役務の提供を行っていること
②常時使用する親族外従業員が5人以上であること
③常時使用する親族外従業員が勤務する事務所、店舗、工場などを所有または賃借していること
これらを満たしていれば、たとえば不動産管理会社などでも事業承継税制を適用できる余地があります。
▼必ず専門家にご相談を
事業承継税制の納税猶予や免除には、それぞれに適用要件や手続きのスケジュールが細かく定められています。
適用要件の確認や手続き、資産管理会社の判定などついては、早めに認定経営革新等支援機関などの専門家にご相談ください。
一級FP技能士 石田夏
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