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マンションの修繕決議、「出席者過半数」で可能に

▼マンション管理・再生の法改正

 区分所有法などマンションに関する法律の改正が検討されています。急速に進むマンションの老朽化や所有者の高齢化に対応するための改正であり、現在、管理と再生の2つの視点から、法務省の法制審議会「区分所有法制部会」において検討が進められています。

 その中で特に注目されている改正案が、マンションの修繕決議を「所有者」の過半数から「出席者」の過半数に緩和するというものです。


▼改正検討の背景

 国土交通省の推計によると、約20年後となる令和23年末の「築40年以上の分譲マンション戸数」は、約425万戸です。これは令和3年度の3.7倍の戸数に該当し、高経年マンションの増加が確実に迫っています。(左図参照)さらに高齢化に伴う相続等の増加によって、老朽化だけでなく、マンションの所有者不明化・非居住化が進むことも懸念されています。



修繕決議は「出席者の過半数」へ

 マンション共用部分を修繕するには、現行の区分所有法において「所有者」の過半数の賛成が必要とされています。 

 しかし、所有者全員の過半数の協力を得ることは容易ではありません。所有者の中には、マンションの修繕に無関心である住人や、賃貸中で住んでおらずスムーズに連絡がつかない人もいます。こうした所有者が集会等を欠席し賛否を明らかにしなければ「反対」と扱われるため、過半数の賛成に結び付かず、必要な修繕が施されないことによるマンションの老朽化・価値の低下が懸念されています。

 また、国土交通省の調査によると築40年以上のマンションでは、外壁等の剥落、鉄筋の露出・腐食、給排水管の老朽化といった、大きな事故に繋がる可能性もある箇所の修繕不足が疑われています(「平成30年度マンション総合調査」より)。 

 そこで、共有部分の改修に必要な「所有者の過半数」とする要件を、「出席者の過半数」に改正する案が検討されています。早ければ令和6年度に改正される見通しです。


▼他の改正案について

 注目されている改正案は他にもあります。例えば、マンション建替えの際、現行法では所有者の「5分の4」の賛成が必要であるところを「4分の3」に見直す案や、所有者不明分を決議の母数から除外する案などが検討されています。さらに、建替え決議の際の賃借権の消滅に関する要件の検討も行われています。マンションを賃貸している場合、建替え決議をしても何らかの理由で賃貸人(所有者)や賃借人の協力が得られずスムーズに明け渡しが進まない事例があることが問題視されているためです。他にも、現行法では全員の賛成が必要となる「一棟リノベーション工事」も、建替えと同等の多数決要件に緩和することが検討されています。

一級FP技能士 石田夏

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