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共有のリスクと相続登記放置のリスクについて(改正民法関連)

 今回は、共有のリスクと相続登記放置のリスクについて、解説致します。


▼共有のリスク

端的に言うと、共有とは問題の先送りです。売買では出資の関係で共有はやむを得ません。 一方、相続では単に協議を先送りにして共有にしている場合が結構あります。

共有者の1人でも経済状況等から現金化したいと考えると、抵抗しても最終的には裁判所で分割されることになります。

もめる主因は評価額です。

共有持分だけ買取る不動産業者も存在し、一部の共有者が当該業者に持分を売却する可能性もあります。当該業者は法律知識を持っているため、協議では相当な苦戦を強いられるでしょう。


 また共有者に相続が発生し、自然に当事者が変更・増加することもあります。行方不明者が出れば不在者の財産管理人の選任が必要で、裁判所への予納金は財産の内容にもよりますが、数十万から百万円前後必要になります。

 分割を評価額で先送りしても時間とともに解消されないため、苦労はしても不動産鑑定士の鑑定評価や取引相場等を調査し評価額を合意して最初の時点で単有を目指すべきです。

直ちに売却し換金・分配する予定で、一時的に共有にするのは良いのですが、共有が長期化することは避けるべきです。


▼農地の場合

 農地の場合は、農地法の規制がない相続承継時に単有にした方が良く、分割協議等による共有後は農地法の規制で単有にするのは難しくなり、持分放棄による集約方法はあっても、贈与税等の別の問題が発生します。

 固定資産税は地方税法による共有者の全額連帯納付義務により、一部共有者が分担に従わないと残りの共有者が事実上、全額負担する運命となります。


▼相続登記放置のリスク

 単独で相続することを決定しても協議書や印鑑証明書など書類を準備しないまま相続登記を放置すると、関係者との連絡不通や更なる相続発生などで、書類を徴求するのが困難になります。

関係者が死亡すれば、その人の相続人全員からの協力が必要です。

また、民法改正により法定相続分を超える部分については、登記等の対抗要件がないと、第三者に対抗できない規定(899条の2)が新設されました。

それによると、遺産分割によるものかを問わず、例えば遺言があり単独で相続することとなって

いても、他の相続人が持分を売却したり、債権者が持分を差し押さえると、自分が単独で相続している旨を主張できず、単有の相続登記が難しくなります。


▼まとめ

 以上は実際に数々の苦労を見てきた立場から、十分に認識をしていただきたい点です。

時間の経過では低減・解消されない苦労は、極力生じた時に解決を図り、そして相続登記については、現時点(令和2年6月)義務化はされていませんが、放置はせずに、迅速な登記をお願いしたいところです。


 立花司法書士事務所 司法書士・立花幸嗣

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