▼墓地に隣接する相続宅地の減額
▽墓地隣接で10%の評価減に
相続税評価額の減額対象になる宅地に、墓地に隣接する宅地があります。相続した宅地から隣の墓地が見えているような場合、その宅地の評価額を10%も減額できる可能性があるというものです。
自らの判断で適用して申告しなければ、税務署が調べて計算し直してくれることはありません。ちなみに小規模宅地等の特例で減額できる宅地の場合、特例による減額前の価額が10%減少します。
▽忌み等による価値減少が対象に
国税庁は、次の①~④のように宅地の利用価値が付近にある他の宅地の利用状況から見て著しく低下していると認められる場合、利用価値が低下している部分の評価額を10%減額できるとしています。
道路より高い位置にある宅地または低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの
地盤に甚だしい凹凸のある宅地
震動の甚だしい宅地
1~3までの宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの
宅地の相続税評価額は、路線価や固定資産税評価額を基に計算しますが、1~4のような個別のマイナス要因は路線価等に反映されていない可能性があるため、こうした減額のルールが設けられているのです。
墓地に隣接する宅地の評価減は、4の宅地として、取引金額に影響があるかどうかで判断します。
墓地までの距離や墓地の規模といった定型的な基準はありませんが、一般的には、土地から墓地が見える、周囲から墓地と認識されている等の状況が求められます。
墓地に隣接している宅地であれば認められる可能性は高いでしょう。
▼減額できないケース
相続した宅地が墓地に隣接していても、次のようなケースは評価減が認められません。
▽宅地の価値低下を考慮して路線価等が付されている
路線価や固定資産税評価額に、墓地による価値の低下がすでに反映されている場合、10%の減額はできません。この状態からさらに10%減額すると、墓地による減額効果が二重になってしまうからです。
墓地による価値低下が反映されているかどうかは、たとえば周辺道路の路線価と比較して墓地に隣接する宅地の路線価だけ低く設定されていないかなどで推測することができます。
▽周囲から墓地と認識されていない
周囲に墓地と認識されていない場所に隣接する宅地も、評価減の対象にならない可能性があります。たとえば、自宅の敷地内に先祖のお墓を建て、住んでいる本人たちしか存在を知らないような場所の隣接地がこれに該当します。
本人たちの意向のみでお墓を移設できることも評価減の対象にならないことの判断要素になります。
▼相続税の還付について
墓地に隣接する宅地の評価額が10%減少すると、相続税の課税価格が減少し、相続税の納税額が減少します。すでに相続税の申告・納税を済ませている場合は、「更正の請求」をすることによって相続税の還付を受けることができます。
還付される税額は、評価減前の税額と評価減後の税額の差額です。この額は、墓地の減少額だけでなく、財産全体の課税価格、法定相続人の数などで変わりますので、個別に計算が必要です。相続税の財産評価、申告、更正の請求は税理士に相談しましょう。
一級FP技能士 石田夏
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