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家賃滞納を理由とする明け渡し強制執行の進め方

  • 10 時間前
  • 読了時間: 3分

 2026年2月、東京都で建物明渡しの強制執行に訪れた不動産執行官が刺殺される痛ましい事件がありました。今回は、その強制執行についてお伝えいたします。


▼強制執行に至るまで

 家賃を滞納する賃借人が賃貸物件からの自発的な退去に応じなければ「建物明渡請求訴訟」を提起することになりますが、勝訴判決が出てもなお自発的な退去に応じなければ勝訴判決に基づき強制執行をすることになります。なお、賃借人の同意なく、合鍵を使って賃貸物件に立ち入ったり賃貸物件内の動産を搬出したりするのは犯罪行為ですので、賃貸人は民事・刑事の法的責任を追及されることになるでしょう。

 強制執行の申立ては、賃貸物件の所在地を管轄する地方裁判所の執行官に対して行います。執行官は、賃借人に対し、一か月以内に自発的に退去するよう「明渡しの催告」を行います。そして、この期限内に自発的な退去をしないとき、最後の手段として「強制執行の断行」をすることになります。なぜ「強制執行の断行」が最後の手段なのかと言うと、非常に高額な金がかかるからです。


▼強制執行の断行と費用問題

 強制執行の内容は次のようになります。

  1. 執行官が鍵を開けて物件内に立ち入る

  2. 物件内にある家財等の動産を賃借人に引き渡す

  3. 家財等の動産を引き渡せる相手(賃借人、同居の親族、使用人等)がいなければ全ての動産をリスト化した上で搬出し倉庫に保管する

  4. 物件に対する賃借人の占有を法的に解除して賃貸人に取得させる


 執行官は数時間程度しか時間を割いてくれないため、賃貸人の側で、合鍵を用意し(合鍵がなければ開錠業者を手配する)、物件内の全ての動産を数時間で搬出できる技術をもった引越業者を手配し、搬出した動産を保管する倉庫を用意する必要があるわけですが、一般の業者では対応できないため、それぞれの特殊業者に対して高額な費用(総額50万円で済めば喜ぶべき)を支払わなければなりません。これらの費用は「執行費用額確定処分」の申立てをすれば法的に賃借人に負担させることができます。しかし、家賃を支払わない賃借人が執行費用を自発的に支払うことはないでしょうから、賃借人の財産に強制執行をしなければならず、多くのケースで回収不能な費用が増えただけになるでしょう。

 しかも、民事執行は民事訴訟よりも難しいので弁護士に依頼しなければできませんが、民事訴訟と同じ弁護士に依頼したとしても弁護士費用を別途支払う必要があります(弁護士費用の最低水準は、民事訴訟で50万円、民事執行で20万円であり、大抵のケースでこれよりも高額になります)。


 このように、賃借人が自発的に退去してくれないと高額な費用負担が発生するため、賃借人に対し、各手続の中で自発的な退去を粘り強く促し続け、場合によっては盗人に追銭という(気持ちはグッとこらえて)20~30万円程度の引越代を渡してでも自発的に退去してもらったほうがお金と時間の節約になるのが実際です。

弁護士Y

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