平成31年度の税制改正について解説していきます。
▼相続分野における平成31年度税制改正の概要
平成31年度の税制改正において、相続・贈与分野では主に次の3点が見直されています。
①個人事業者の事業承継税制の創設
②一括贈与非課税措置の見直し
③民法改正に伴う課税関係の整理
今回は民法の改正に伴い、相続税に影響する部分についてお話をしたいと思います。
▼配偶者居住権の創設
民法の相続に関する改正はいくつかありますが、まずは配偶者居住権の新設についてお話をします。
配偶者居住権とは、ひらたく言えば、旦那さんがお亡くなりになった時に、奥さんが住んでいた旦那さん名義の家に、奥さんが生涯住み続けることを認めることです。
法務省のチラシでは次のように説明しています。
「配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身又は一定期間、配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権利」です。
旦那さんが亡くなった場合、奥さんが自宅に住み続けることを当然のように思われていたかもし
れませんが、実はそうではなかったと言うことです。
▼配偶者居住権創設の背景
わが国では相続財産に占める不動産の割合が高いことが知られていますが、旦那さんが住んでいた自宅と敷地を奥さんが遺産分割で取得した場合、法定相続分のほとんどが居住用不動産となってしまい預貯金をもらえなくなる可能性があります。
そうしますと、奥さんは住む場所があっても生活費が不足する事態が発生する恐れがあります。特に、平均寿命の伸びによって、旦那さんの死亡後の生活が長期化していますので、住み慣れた自宅に住む権利を確保しつつ、その後の生活資金を確保することを目的にこの権利が創設されたのです。
▼配偶者居住権の相続税評価
配偶者居住権が設定された自宅は、自由な処分が制限されます。そうしますと何の権利も設定されていない建物と同じ評価ではないので、税制上考慮がされることとなりました。
次回はその評価方法についてお話ししたいと思います。
税理士法人吉田会計 税理士 吉田和義
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