▼更新料に対する最高裁判決
賃貸借契約書の更新料特約が消費者契約法10条によって無効になるかどうかについて、最高裁判所平成23年7月15日判決は、「賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載」すれば有効であると判断しましたが、他方で「高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り」という条件を付けています。
▼最高裁判所事案
最高裁判所で争われた事案(最高裁判所が更新料特約を有効であると判断した事案)は、①契約期間1年、賃料3万8千円、更新料は家賃2か月分、②契約期間1年、賃料4万5千円、更新料10万円というものです。
つまり、家賃2か月分の更新料が毎年発生したとしても「高額に過ぎる」とは言えないというわけですから、賃貸経営者にとって非常に有利な判断です。
そして、更新料特約が有効である(消費者契約法に違反しない)場合には、更新料の支払いは賃借人の法的義務となるため、賃借人が更新料の支払いをしなければ債務不履行となります。
▼更新料不払いで契約解除できるか?
さて、本題の更新料不払いで契約解除できるかですが、賃貸借契約のような継続的な契約関係は当事者間の信頼関係に基づくため、単なる債務不履行があっただけでは契約解除をすることはできず、当事者間の信頼関係を破壊するに足りる特段の事情がなければ契約解除をすることはできません。
賃料を滞納したケースでは、裁判所は、概ね滞納額が3か月程度に達したときに信頼関係を破壊するに足りる特段の事情があると判断します。そのため、例えば更新料が2か月分のケースでは、更新料の不払いだけでは当事者間の信頼関係を破壊したとまでは言えず、更新料の不払いに他の事情が加わる必要があるでしょう。
▼更新料不払いに対する最高裁判断
この点について、最高裁判所昭和59年4月20日判決は、次のとおり判断しています。
「(更新料の)不払が当該賃貸借契約の解除原因となりうるかどうかは、単にその更新料の支払がなくても法定更新がされたかどうかという事情のみならず、当該賃貸借成立後の当事者双方の事情、当該更新料の支払の合意が成立するに至つた経緯その他諸般の事情を総合考量したうえ、具体的事実関係に即して判断されるべきものと解するのが相当である」
「本件更新料の支払は、 賃料の支払と同様、更新後の本件賃貸借契約の重要な要素として組み込まれ、その賃貸借契約の当事者の信頼関係を維持する基盤をなしているものというべきであるから、その不払は、右基盤を失わせる著しい背信行為として本件賃貸借契約それ自体の解除原因となりうるものと解するのが相当である。」
▼契約更新に対する賃貸借契約書の有り方
なお、法定更新の際も更新料が発生するかどうかが問題になることがありますが、賃借人は、本件賃貸借契約を更新するときは、賃貸人に対し、「法定更新であるか合意更新であるかにかかわりなく、1年経過するごとに更新料として賃料の2か月分を支払わなければならない」といったように、法定更新であっても更新料が発生する旨を賃貸借契約書に「一義的かつ具体的に」記載しておかなければ消費者契約法に違反することになるものと思われます。
元弁護士Y
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