▼増える空き家
2018年の総務省の「住宅・土地統計調査」における空き家の数は、849万9千戸、総住宅数に占める割合は13.6%でした。60年前調査から増加の一途を辿り、約20年前の景気後退期からは約1.5倍に増加しています。
さらに世帯所有空き家(居住世帯のない住宅のうち、貸家や別荘等を除くもの)の統計によると、その5割以上が相続・贈与による取得であるとされています。
▼相続した空き家を売却するには
空き家を放置すれば、管理コストが発生するばかりか、老朽化に伴う事故等で責任を問われるリスクもあります。
一般的な売却方法は、不動産業者に相談して仲介してもらうことです。他にも、近隣住民に直接相談すれば、将来、お子さん夫婦が戻ってくる時期に備えて、買い取ってもらえる可能性があります。
▼空き家売却にかかる税金の特例
相続した空き家の売却益(譲渡所得)には、所得税や住民税がかかります。
【譲渡所得の計算式】
売却代金 −(取得費+譲渡費用)
【譲渡所得にかかる所得税の計算式】
譲渡所得×税率
税率は、売却した年の1月1日を基準に、それまでの所有期間が5年を超えるかどうかで変わります。
5年超 :所得税15%、住民税5%
5年以下:所得税30%、住民税9%
①3,000万円の特別控除の特例
条件にあてはまる売却であれば、確定申告書にそれを証明する一定書類を添付することで、譲渡所得から最大3,000万円を控除することができます。
【主な条件】
・平成28年1月2日以降の相続・遺贈によって取得した空き屋であること
・家屋とその敷地の両方を取得していること(家屋のみ、敷地のみの取得は対象外)
・1981年5月末以前に建築されていること
・区分所有登記がされていないこと
・相続開始直前の用途が、亡くなった方の居住用であり、他の家族が住んでいないこと(老人ホーム等への入居が理由で、相続開始直前に住んでいない場合は、入居直前の用途で判定します)
・相続から売却(敷地のみ売却の場合は、取り壊しの時)まで、相続人などが使用していないこと。
・売却先が第三者であること
・売却金額が1億円以下であること
②相続税の取得費加算の特例
相続や遺贈によって取得した土地や家屋などを一定期間内に売却した場合、負担した相続税のうち一定額を、譲渡所得の取得費に加算できる特例です。
一定書類を添付し、確定申告を行う必要があります。
【主な条件】
・相続や遺贈により土地や家屋などの財産を取得したこと
・売却した人に相続税が課税されていること
・相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売却したこと
【取得費に加算する相続税の計算式】
A × B / C
A:売却した人の確定相続税額
B:売却した財産の相続税の課税価格の計算の基礎に算入された価額
C:売却した人の相続税の課税価格
▽特例の併用は不可
①と②の特例は併用できません。
どちらも適用できるケースでは、有利になる一方の特例を選択する必要があります。税務に関しては、税理士に相談しましょう。
一級FP技能士 石田夏
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