国土交通省の発表によると、2018年度(平成30年度)の賃貸物件着工数は、39万0093戸で、前年度よりも4.9%減少し、2年連続での減少となりました。
なぜ減少傾向にあるのか、今回はその要因について考えてみたいと思います。
▼賃貸物件の地域別着工数
賃貸物件の着工数を地域別で比較すると、首都圏では14万0539戸で前年度より5.4%の減少となっています。
また、近畿圏では5万8058戸で、前年度より0.7%の減少で、首都圏よりは減少率が抑えられています。
全国の中でも、減少率が激しい地域は、福島県の4250戸で、前年度より29%も減少、長崎県では、2486戸で前年より28.8%減少しています。
地域差はあるものの、全国的に賃貸物件の着工数は減少しています。次にこの要因についてみていきます。
▼不動産融資の減少
2年連続で賃貸着工が減少した主要な要因として、「個人向け不動産融資の減少」が挙げられます。その背景には、スマートデイズ社とスルガ銀行の問題に端を発して、金融庁が金融機関に対し立ち入り調査をするなど点検等が厳しくなっています。
そのため、金融機関側は不動産融資を慎重に進めざるをえない状況にあります。その結果、2018年の「個人の貸家業」への新規貸出額は前年比16・4%減と2年連続で大幅減となっています。
▼空き家の半分は賃貸という現状
賃貸着工が減少しているもう1つの要因は、「空き家問題」です。「空き家」と聞くと、高齢者が住まなくなった持ち家などをイメージしますが、実は、空き家の50.9%は賃貸用住宅であることが、土地統計調査(平成30年)で明らかになっています。
既に世帯数を上回る住宅供給数となっているにも関わらず、新設住宅が引き続き建築されている状況になっています。
以前は、賃貸住宅は安定した収入源になりうる魅力ある事業だったものが、場所によっては逆に将来を不安視される状況になっていることも新設着工をためらう要因と考えられます。
▼それでも有力な不動産投資
融資の消極化などで、賃貸への投資意欲が低下していますが、金利の低い現在の経済情勢において、不動産投資は、今なお有力な投資手段のひとつです。
ただし、将来を見据えた投資判断が重要性を増していることは確かです。
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