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〈賃貸駐車場の困りごと〉無断駐車への対応②

更新日:2023年8月1日

▼対応の手順

 前回、無断駐車車両を発見したときの初期対応についてお話ししました。内容は、第一に所轄の警察署経由で自主退去を求め、それがダメなら第二に自作の警告文書を無断駐車車両のワイパーに挟んで再発防止を求め、それがダメなら第三に弁護士名での警告文書を郵送するというものでした。

 第三の方法には10万円程度の弁護士費用がかかりますが、初期対応に失敗し、無断駐車が繰り返され、あるいは継続的に放置されるようになると非常に面倒な事態になります。

 無断駐車が困る理由は、その土地を無断駐車車両に占有されることでその土地の利用権が阻害されるからです。無断駐車車両をレッカー移動することができればその土地の占有を取り戻す

ことができますが、我が国では自力救済が禁止されていますので、裁判所の命令に基づいて行わなければ撤去した人が不法行為責任を問われるリスクが発生します。

 

▼裁判による強制執行

 強制執行のためには、裁判所に「車両撤去土地明渡等請求訴訟」(「等」なのは損害賠償請求も一緒にするからです)を提起して確定判決を取得し、確定判決に基づいて強制執行することになります。

 しかし、裁判をするには弁護士費用(最低でも30万円程度)がかかるほか、時間もかかります。第一回期日が開かれるまで一か月半ほど待たなければなりません。第一回期日に相手方が欠席すればすぐに判決の言い渡しになりますが、相手が争えば第一回期日の一か月後に第二回期日が設定され、以後一か月おきに期日が開かれていき、判決まで半年から一年程度の時間が

かかってしまいます。

 しかも、強制執行には最低でも40万円(弁護士費用と執行費用で20万円ずつ)のお金がかかります。そのため、民事訴訟を提起したとしても、まずは裁判所に出頭した相手方が裁判官の説得に応じて自主的に撤去しようという気持ちになることを期待することになります。

 このように民事訴訟の提起に至ったとしてもまずは相手方の自主的な撤去を求めることになるわけですから、第一及び第二の初期対応が失敗した段階で直ちに弁護士に依頼し、弁護士名の警告文書を郵送したほうが、長い目で見てお金と時間の節約になります。


▼断交の仮処分の申立て

 車両がずっと放置されており、お金よりもその土地の占有の回復を優先したいときは「断行の仮処分」の申立てをするという選択肢もあります。

 二週間程度で審尋期日が開かれ(相手方が出頭すれば裁判官が自主的な撤去を説得してくれます)、審尋期日の一週間後には仮処分命令が発令されますので、最短で一か月程度で放置車両をレッカー移動することができます。

 このように無断駐車を排除しようとするとお金も時間もかかりますので、土地をフェンス等で囲ったり区画番号を明示したり無断駐車を禁止する看板を設置したり監視カメラを設置したりするなどして無断駐車をしづらいような雰囲気にしておくことが重要です。

元弁護士Y


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