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原状回復トラブルと対処法②〈事前の対策〉

  • 3 時間前
  • 読了時間: 3分

 前回の事例検討に続いて、事前対策について解説していきます。


▼トラブルになった際の費用

 原状回復費用の負担額を巡って賃貸人の言い分と賃借人の言い分が対立したとき、どちらの言い分が正しいかをジャッジするのは裁判所です。

 しかし、裁判所にジャッジしてもらうためには民事訴訟を提起しなければならず、民事訴訟を提起するためには弁護士に依頼しなければならず、その弁護士費用を負担しなければなりません。

 弁護士費用は、事前の着手金と事後の報酬の二本立てで、係争物件の経済的価値によりますが、最低でも五十万円程度は見ておくべきです。なお、弁護士に依頼せず本人訴訟をすることもできますが、自分で釣ったフグを自分でさばいて食べるようなものですのでお勧めはしません。


 このように数十万円の弁護士費用が掛かるということは、賃貸人と賃借人の双方にとって裁判所によるジャッジを求めるときの最大の障壁になります。つまり、低額事件では、仮に全面勝訴したとしても自分の弁護士に数十万円の弁護士費用を支払ったのでは割に合わないので、裁判所によるジャッジを求めることができなくなります。そこで、賃貸借契約書の特記事項と敷金を活用するわけです。


▼対策①賃貸借契約書

 賃貸借契約書を用意するのは賃貸人であって、賃借人は賃貸人が用意した賃貸借契約書にサインするだけであるのが通常です。つまり、賃貸人がその気になれば、賃貸借契約書に賃貸人にとって有利な特約をいくらでも盛り込むことができます。もちろん賃借人にとって一方的に不利益すぎる特約をテンコ盛りにすると、裁判になったときに裁判官の心証を著しく害して判決に影響するリスクがありますが、地裁レベルで判断が分かれている事項について賃貸人の有利な見解に基づいて特約に入れ込む程度であれば問題はありません。

 また、クロスの価値が6年で一円になるという国交省のガイドラインについても、クロスを張り替えることなく30年も40年も同じ家に住み続ける人もいるわけですから、クロスを汚損した賃借人が新品のクロスに張り替える費用を全額負担する旨の特約を入れ込んだとしても裁判官の理解が得られない事態にはならないでしょう。


▼対策②敷金の預かり

 もっとも重要なことは、十分な金額の敷金を事前に徴収しておけば、賃貸人の一方的な意思表示で原状回復費用と相殺することができるという点です。賃借人が「原状回復費用は過大だから敷金の一部を返してほしい」と思ったとしても、賃貸人との話し合いがつかなければ自分で弁護士費用を負担して民事訴訟を提起しなければならず、上記の障壁に直面することになります。

 これに対し、賃貸人が十分な金額の敷金を徴収していなかったときは、不足する原状回復費用について賃借人に請求することになりますが、賃借人が任意の支払いを拒否したときは賃貸人が民事訴訟を提起しなければならず、今度は賃貸人が上記の障壁に直面することになります。

 このような状況からオーナーは、「賃貸借契約書の特約」と「敷金」という武器を十分に活かすべきというのが事前対策です。

弁護士Y

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