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『生命保険』を活用した相続対策

 今回は生命保険を相続対策として活用する方法をお伝えします。


▼生命保険の知られざる特徴

 被相続人の死亡によって支払われた死亡保険金は、受取人に指定された人物の固有の財産という扱いになり、本来の相続財産として扱われません。

 しかし、被相続人が保険料を負担して遺族が死亡保険金を受け取る場合、実質的には遺産と同等の経済的効果を受けることから、こうした死亡保険金は相続税の計算上「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。


 「みなし相続財産にあたる死亡保険金」は相続税の課税対象になりますが、相続人が受け取った場合、次の金額まで相続税はかかりません。

非課税額:500万円×相続人の数

 遺された相続人の生活保障に配慮して、このような有利なルールが設けられているのです。


▼生命保険を活用した相続対策

 死亡保険金は本来の相続財産にあたらないため、遺産分割の対象になりません。

 通常、複数の相続人がいる場合、遺産分割をするまで遺産は共有状態となり勝手に処分することはできませんが、死亡保険金は、受取人の財産なので、相続直後の当座の生活資金などに自由に充てることができます。

 ただし令和元年7月から、一定割合の預貯金は遺産分割前に引き出せるようになったため、当座の資金面を過剰に心配する必要はなくなりました。


預貯金の多い方は、相続人を受取人とする生命保険に加入することで相続税対策ができます。具体例で見ていきましょう。


 左の例で相続税の対象になるのは、1億円から基礎控除額を差し引いた金額です。

 ではこの例で、父が保険金額2千万円(受取人は長男)の生命保険に加入したとしましょう。便宜上、保険料の総額も2千万円とします。そうすると相続税の対象は次のように変化します。


 長男は保険金2千万円を実質的に父の遺産から受け取っていますが「500万円×3人」まで非課税となりますので、相続税の対象は500万円になります。

 ちょうど預金を保険金に置き換えたような構図です。相続税を抑えることは、結果的に多く遺産を残してあげることと同じになります。  

 活用しやすい生命保険は、終身の死亡保障があるタイプです。一時払いや全期前納を活用すれば保険料の総額が割安になる点も検討してみてください。


▼生命保険の活用の注意点

 保険料の負担者は、被相続人であることが必要です。別の人物が負担していると別の税金(贈与税や所得税)の対象となり、相続税ほど大きな非課税効果は得られません。


 保険金の受取人は「相続人」でなければ非課税の適用はありません。相続人は「法定相続人」とは異なり、相続放棄をすると相続人にあたらなくなるため注意してください。

ファイナンシャルプランナー 石田夏

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