全3回にわたり、相続税の基本から一次相続・二次相続の注意点までを解説しています。前回は、法定相続人が少ないほど相続税の負担が増える理由を解説しました。今回は、二次相続で相続税が増える理由とその対策を説明します。
▼配偶者の税額軽減とは
配偶者の税額軽減とは、相続税の総額のうち、配偶者が負担する税額を大幅に減らす特例です。配偶者が取得した遺産の課税価格が1億6000万円以下、または法定相続分までは、配偶者に相続税はかかりません。例えば、法定相続人が故人の妻(母)と子2人の場合、遺産1億円(内訳:現金6000万円、不動産3000万円、妻が受取人の生命保険金1000万円)に対する相続税の総額は480万円です。仮に、この1億円をすべて妻(母)が取得し、特例を適用すれば、480万円は0円になり、相続税は発生しません。(相続税の申告は必要です)
▼二次相続では税負担が増える?
配偶者の税額軽減は、一見すると、最高の節税方法に思えます。しかし、次に妻(母)が亡くなった際の相続、つまり二次相続までのトータルの税負担を考えると、かえって負担が大きくなる場合があります。仮に妻の相続で、夫の1億円がそのまま残っており、それを子2人が相続した場合、その税負担は770万円になります。
480万円よりも高くなる理由は、法定相続人の数が減ったことと、生命保険金が二次相続では現金扱いとなり非課税枠が使えないことにあります。
▼あえて財産を分散させる
それでは、一次相続において不動産と生命保険金は配偶者に、現金6000万円はあえて子2人に取得させた場合はどうでしょうか。この場合、一次相続では、子2人が計320万円を負担します。二次相続では、不動産3000万円と現金1000万円を子2人が相続しますが、これは基礎控除の範囲内ですので、相続税は発生しません。
つまり、一次相続で配偶者の税額軽減に頼りすぎないほうが、二次相続まで考えた際に、トータルの税負担が少なくなる場合があるということです。
(※)相続税の計算に他の特例や控除は考慮していません。
相続税対策は、二次相続までを見据えたシミュレーションが重要です。最適な対策は家族や資産の状況により異なるため、早めに税理士などの専門家を活用しましょう。
一級FP技能士 石田夏
Comments